南風一の世界

　　戸籍　　　　南風一

戸籍には顔があって
載っている顔が見えない名前が
笑っている戸籍

死亡と記された名前が
泣いている戸籍

既に閉鎖されて
身寄りがない戸籍は
最早誰からも閲覧請求されることは
ないだろう

すでに５０年が過ぎて
家族の歴史が終わってしまった戸籍

最早抜け殻と化した戸籍を読んで
果たして戸籍に記された名前の人たちの
ささやかな人生の営みとは
何だったのだろう？
と考える

最早露と消えてしまった家族同士の名前だけど
生存中
楽しい日々を共有出来ていたならば
そのことに値打ちがあったということ

そう解釈して
一家の冥福と
自らの慰めとする

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