南風一の世界

2022/07/17(日)21:49

小さな世界から

詩(2821)

 小さな世界から  南風一 子どもの頃は教育の投資効果ということなど 分からなくて ただ目先のテストの成績が良くなることが楽しくて あるいは数学の問題が解けたときの快感が堪らなくて 勉強したのだった 高校へ進学するときは ただ成績に合わせて高校を選んだだけだった 将来の職業を考えて高校を選んだわけではなかった だから高校に進学したものの 自分が何に成りたいのかまだ分からなかった ただ何となく学者か研究者になりたいという希望はあった 私が進学した高校は地方都市ではあったものの 県下有数の進学校だったので 国公立の有名大学か医学部へ進学するのが当然とされていた そんな環境下だったので 私も一浪して国立の有名大学に進学した さて有名大学に進学したまでは良かったけれど 関東出身の自宅から大学に通うクラスメイトが大学に期待することと 私が大学に期待するものとは大きな隔たりがあった 関東出身組の者たちにとって 大学進学は次の就職までの定められたモラトリアム期間の1ステップにしか過ぎなかった そういうことだったから彼らにとって大学生活をいかに楽しく過ごすかが 最大の課題だった それに対し私は大学生活そのものが 卒業後の人生をどんな風に生きるかという自分探しの格闘そのものだったので 大学生活をおよそ楽しむということができなかった 学者か研究者になりたいという希望はあったけれど そもそも自分が何を専門として研究すればいいのか (端的に言えば、自分にはどんな研究分野が向いているのか?) それが分からなかった 結局そのまま大学で研究生活を続けるのは止そうと 思ったのは理科系大学院へ進学して 少し専門の学問の奥深さを知ったからかも知れない (それより余りにも狭い専門分野を深堀することに意義を見出せない  と感じたのかも知れない) とにかく普通の製薬会社に ITエンジニアとして就職できた それから二度転職することはあったけれど 60歳定年を迎えるまで正規社員で勤めたので (というか昔は社員と言えば「正規」であることが当たり前だったので)  ほどほどの水準の給与は貰えた 定年までに一戸建て住宅のローンは返済できたし 子3人も専門学校までではあったが学校を終えることは出来た 定年後は年金生活までのつなぎとして 低賃金ながら社会的意義のある職場で働いている 子どもの頃の小さな世界から出発した人生の歩みではあったが 随分遠くまで来てしまったと思う ゴールがこんな処とは思ってもみなかったけれど こういう展開は得てして有りうることかも知れない 子どもの頃には想像もしなかった世界に 暮らしていること (詩集の宣伝) 「青春17切符+1」3月26日発売。 購入は、 こちらからどうぞ 詩が良かったと思う方は 人気blogランキング

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る