世に詐欺話のネタは尽きまじ
京大生ら約40人に事業への出資をもちかけて、総額にして3500万円ほどを出させた男がいるらしい。毎日の朝刊から。京大や同志社の学生に、バーなどを経営するための出資に協力してほしいと持ちかけて、サラ金で融資を受けさせてその金を受け取った。しかしお金は全然返還されず、現在、何人かの出資者がその男を民事訴訟で訴えているとか。警察も詐欺容疑での立件にかかるらしい。京大生がそんなのにひっかかるのか、と誰しも思うでしょう。でもそれは、後から記事になったのを冷静に見ている立場だからそう思えるのであって、渦中にいる当事者は割りとひっかかってしまうものです。おそらく、この件の首謀者の男は最初、学生の誰かに言葉巧みに近づいていって、さらにその友人たちをも巻き込むように仕向けた。親しい友人から「自分の親しい人が事業をやるから出資してくれないか、必ず儲かるから」と真剣に言われて、「そんなの詐欺だ」と言って切り捨てるのは、意外に難しいのではないでしょうか。まあ私なら切り捨てますが。実は私の学生時代にも同じような話がありました。私が筑波大学に入ってほどない時期ですから、平成2年か3年ころです。詳細には覚えていませんが、学生たちの間で、あるサークルみたいなのにお金を出すと1か月後に2割の利子がついて帰ってくるという話が広がりました。結局、詐欺的なものだったらしいのですが、地方から集まってきて、筑波研究学園都市という一種閉鎖された社会で学問にいそしんでいた純真な学生の中には、そういう情報を吟味せぬままに信じてしまった人も多かったでしょう。大学も調査に乗り出した結果、私の所属する「社会学類」(法学部や経済学部に相当する)からは、私を含め、これに出資した人は1人もいなかったらしい。当時、民事訴訟法の講義を担当されていた春日偉知郎先生が、「さすがにうちの学類は『スレてる』人が多いんだな」とおっしゃってました。ただ、私自身は、友達が少なかった(バイクでの一人旅が好きだった)せいで実際に話をもちかけられなかっただけで、もし親しい友達が真剣に求めてくれば、1万円くらいなら出していたかも知れません。私の話はバブル景気のころです。最近は、「稼ぐが勝ち」とか言った元社長がいて、「いい金儲けの方法がどこかにあるはずだから、それで人を出し抜いて稼いでやろう」、なんて考える人が増えたのでしょうか。儲け話の大半は「ウソ」です。友達に「出資してくれ」と言われたら、「お金を失うくらいなら友達を失ったほうがいい」というくらいの気持ちで(口には出さないほうがいいと思いますが)、はっきり断りましょう。