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カテゴリ:雑感
一部新聞での報道です。
ある調査によると、6割以上の企業で、「心の病」を抱える社員が増加傾向にあることが判明したそうです。 社会経済生産性本部というのが実施したアンケート調査結果なのだそうです。 社会経済生産性本部というのは、調べてみると、公益目的の財団法人のようです。 名前のとおり、社会経済全体の生産性アップのための研究を行なっている団体なのだと思います。 ここが、どのようなアンケート調査を行い、どのような質問項目にどんな回答が返ってきたか、詳しくは書かれていないようですが、調査対象とした企業の6割以上が、 「そういえば最近、ウチの社員の中に心の病を抱えてる人が増えとるなあ」 と答えたわけで、それはそれで、注目に値する調査結果です。 何となく、世間一般のイメージ的にも、むべなるかなと肯んじうる結果ではないでしょうか。 でも実際は、どんなものなんでしょうか。心の病。 もちろん、実際に、これまで見過ごされてきた、本当に深刻な症状を抱える人が、相応の配慮を図られるようになってきたのは、望ましいことです。 しかし一方で、「心の病」というものが強調されすぎることによって、 これまでは「ちょっと滅入ってるだけ」と思ってるうちに回復していた程度のものが、「これって心の病なのではないか」と深刻に考え込むことによって逆に症状を悪くさせることも相当程度にあるのではないか。 たとえば私自身、世知辛い事件が続くとたまに仕事がイヤになるときもあります。気分がふさぐこともあります。二日酔いになってもう今日は飲まないぞと朝は思っていても夜になったら飲みたくなるとか、翌朝さらに二日酔いになって自己嫌悪に陥るとかいうのもよくあります。これを心の病というと、世の中は病人だらけになってしまいます。 少し前なら、「不登校」なんていうのも問題にされました。 従来なら「子供のワガママだから叩き出してでも学校へ行かせる」というのが対処法だったと思いますが、いつしかこれも、心の病だとか、学校側に問題があるかのような言い方がされて「不登校は子供の権利だ」といわんばかりの論調も見られる。叩き出されないがためにもっと深刻な引きこもりになった児童もいるのでは。 あと、勝手な想像になりますが、医療側の問題もあるように思う。 医者として、患者(つまり客)が、精神の不調を訴えてるときに、「気のせいだから帰れ」とはきっといえないのでしょう。何らかの診断を下し、薬を処方する。そうしないと患者も納得しないし、医者としても診療報酬が入ってこない。 医者としてはこういうときにいくつかの問診をして、診断名を決めることになると思うのですが、そうすると世の中のたいていの人は何らかの精神疾患の診断基準に該当してしまうとかいう話も聞きました(一例として、「精神疾患はつくられる」 ハーブ・カチンスら著、高木俊介ら訳、日本評論社)。 もちろん、心の病や不登校が深刻な問題を含んでいる場合があることは否定しません。しかし、本当に深刻な心身の症状を伴っているのかは、慎重にそして厳密に、吟味すべきだと思います。 私自身は、自分では、精神的にタフ(悪く言うと鈍感)だと思うので、これまであまり深刻に悩んだことがないから、そう気楽に言えるのかも知れません。 しかし、何でもかんでも「心の病」と診断してしまうと、放っておけば治るような人まで「病人」のレッテルを貼ってしまうことになるし、また、本当にケアされるべき人が「大勢の中の一人」ということで軽く扱われることになるので、誰にとっても不幸なことになるように思うのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/08/07 01:37:34 PM
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