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カテゴリ:判例、事件
NHKが番組を改編したことに対し、東京高裁が賠償を命じる判決。
事案は、今朝の日経によりますと、 「従軍慰安婦問題を巡る民間法廷」を取り上げたNHKの番組の取材に協力した市民団体が原告。 市民団体側としては、従軍慰安婦問題や国の戦争を問うような内容の番組と認識して取材協力したら、一部政治家によるNHK上層部に対する何らかの介入があり、それによって番組が当たり障りのないものになった。 その無断改編を不満とした原告に対し、裁判所は、NHKと番組制作会社に計200万円の支払いを命じた。 支払いの法的根拠は何かというと、「不法行為」(民法第709条)です。不法行為とは、故意または過失によって他人の権利を侵害し、損害を与えることです。 では今回、原告はどんな権利を侵害されたか。ここで出てくるのが「期待権」という言葉です。 期待権というのは、「期待どおりのことをしてもらう」権利のことで、上記の例であれば、原告の意向に沿った番組作りをしてもらうことです。 民法上の権利というのは、「人に何かをしてもらうことができる」という地位のことを指します(より正確には、権利にも債権と物権があって、いま言ってるのは債権のほうです)。 たとえば、100万円の「貸金債権」という権利があるということは、借主に対し、100万円を返してもらうことができる、という地位にあります。 一方、この期待権、お金を貸したとかいう場合と違って、目に見えるものでない。 それに、どこまでのレベルをもって期待権と認めるか。単なる「期待」だけではダメです。 たとえば、道端でニュース番組のスタッフに取材されたから応じた、その晩のニュースで自分の映像が出てくると期待して観たらカットされた、期待を裏切られたから賠償金を払え、と言っても、まず認められない。そんなことが認められるようなら、テレビ局は取材できなくなる。 よほどの強い期待が生じている必要があって、今回の件では、取材の意図や取材内容からして、国の戦争責任を断罪するような番組ができるものと強く期待できるような事情があったと認定したわけです。 NHKは上告したらしい。テレビ局には、報道の自由・編集の自由があるはずだと。 報道の自由は表現の自由(憲法第21条)に含まれるはずであり(それは最高裁も認めている)、それが目に見えないような期待権に一歩譲らないといけないなんておかしい、というわけで、これはこれで一理ある考え方です。 報道の自由と個人の期待権がぶつかりあってるわけで(憲法の勉強をしているとよく出てきますね)、最高裁はどう判断を下すか、注目したいところです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/01/30 02:25:35 PM
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