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カテゴリ:判例、事件
東京高裁が、元オウム真理教の松本被告人(今は死刑が確定して「松本死刑囚」ですが)の裁判での弁護人2名を「懲戒処分」にかけるよう、所属弁護士会に申立てをしたと。
この弁護人2名は、松本の控訴審(2審)において、「控訴趣意書」という所定の書面を期限内に出さなかったために1審の死刑判決が確定してしまった。それが、松本被告人にとって2審・3審と争っていくことを封じてしまったため、「松本被告人の利益を害した」というのが懲戒請求の理由です。 すでにこの話については何度か書きました。たとえばこれ。 だからこの話を一から蒸し返すつもりはないのですが、この一件、皆さま方はどう感じるでしょうか。弁護人のやったことがおかしいのか、東京高裁の言っているのがおかしいのか。 この弁護人のやったことは、結果として、2審を途中で打ち切らせ、その時点で早くも死刑判決を確定させたという事態をもたらしました。松本の早期の死刑判決を求める人にとっては、上々の成果、といえるでしょう。 常々、悪人が弁護されるのはおかしいとか、人殺しはさっさと死刑にすべきだと言っている人にとっては、この弁護人を賞賛してやらないといけない。東京高裁の言っている「松本被告人の利益」なんてトンデモない、アホか、ということにならないといけない。 私自身は、悪人が弁護されるのはおかしいなどというのは、単純な感情論に過ぎないと信じます。実際、そういう意見を公に言う人は見たことがなくて、ネット上の匿名の発言とか、酒場での与太話のレベルに過ぎないものと思います。 しかし、どんなレベルの話であれ、それが時として一部の「世論」を形成することがある。とすれば、なぜ刑事弁護制度が必要なのかとか、それから刑法39条とか民法772条はどんな意味があるのかとか、一弱小弁護士の弱小ブログながら、これまで書いてきたつもりだし、またこれからも何か書いていこうと思っています。 何だか話が広がりすぎましたが元に戻します。 私自身は、上記の過去の記事にも書いたとおりで、この件で弁護人のやったことにはやや疑問を感じるところです。実際、事件の審理が尽くされないまま、アレッと思っているうちに裁判が終わってしまった、と奇異な感じを抱いた方も多いかと。 しかし、日ごろから、人殺しはさっさと死刑にしろ、と言ってる多くの人は、この事件の弁護人をほめてやらないといけないのでしょうが、果たしてこれらの人は、この弁護人のやったことを手放しで賞賛されるのでしょうか。今後の「世論」の展開を見てみたいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/03/08 09:51:34 AM
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