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カテゴリ:判例、事件
以前書いた森進一の「おふくろさん」騒動ですが(これ)、昨日の朝刊や朝のテレビの見出しに、「決着」とありました。歌の冒頭にセリフをつけるのはダメだと。
早くも決着? たとえ「仮処分」の裁判手続をとったにせよ、こんなに早く結論が出るはずもないのに、どう決着したのだろうと見てみると、JASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)がそういう「通達」を出したのだそうです。 「おふくろさん」の歌の冒頭にセリフをつけるのは、著作者の権利としての「同一性保持権」(詳細は上記記事)を侵害するおそれがあるからダメだと。 一般的に通達というのは、役所の内部で、上部の機関が下部の機関に対し、法律の解釈や手続上の扱いなどについて指示を行うことを言います。 行政法の教科書によく出てくる例としては、 「遊戯具」に物品税をかけるという税法の条文があるが、「パチンコ台」はそれにあたるかどうかは書いていない、その辺の解釈は国税局長あたりが解釈して、「パチンコ台は遊戯具にあたるからパチンコ店から物品税を取りなさい」と各税務署に指示する、これが通達です。 あくまで「内部的」なものであって法律とは違う。だから上記の例でパチンコ屋としては、 「解釈の違いじゃー、パチンコは遊戯具に該当せんぞー、物品税払わんぞー」 と言っていい。役所がそれに不満なら、裁判を起こすしかない。 しかし役所は強大な「許認可権限」を持っていて、この世の中、何をするにも「役所の許可」が必要です。通達に従っておかないと後々、色んなことで許認可が得られなくなるという理由で、実際上はそれに従わざるをえない。 JASRACの通達も基本的にはそれと同じと考えてよいでしょう。法的な意味での拘束力はない。しかし、JASRACは(きちんと調べていませんけど)日本の歌謡曲の著作権の大半を管理していて、それを商業的に利用しようと思ったらその許可がいる。 だから森進一とイベント企画者が、 「何がJASRACの通達じゃー、台詞つきで歌うぞー」 とアナーキーなことをやったとしても、単に「通達」に反しただけに過ぎず、ただちに「違法」となるわけではない。作詞者が「同一性保持権の侵害だ、損害賠償よこせ」と言ったとしたら、それはそれで裁判で一から争う必要がある。 ただそんなことをすると、JASRACは以後、森進一とそのイベント企画者に、管理している歌謡曲を商業利用することを許可しないでしょう。だから事実上、台詞つきで歌うことは禁じられたと言っていい。 これでこの問題は収束するのでしょうか。長年台詞つきで歌ってきたのが今になって問題になったのは、法的なこと以外の問題が含まれているように思うのですが、そのあたりはよく分かりません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/03/10 04:59:03 PM
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