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カテゴリ:法律、制度
今朝は各紙朝刊が休みなので、少し前の記事から。
刑事裁判に「付帯私訴」(ふたいしそ)の制度が導入されるらしい。 具体的にどんな制度になって、いつから開始されるかとかは、今後詰めていくことになるのだと思います(その新聞記事を見ずに書いています。すみません)。 付帯私訴とは、刑事事件の裁判において、被告人に判決を下した後、同じ裁判官が、被害者に対する賠償を命じる判決も出すという制度です。 これまで、賠償のことは民事上の問題として、刑事裁判とは別に民事裁判で行われてきたのを、一体化するわけです。 検事が刑事裁判を提起することを「公訴」の提起とも言います、犯罪に対し公の立場から断罪するとの意味です。これとの対比で、被害者の加害者に対する賠償請求は、被害者の「私的」なものであって言わば「私訴」である。公訴に付帯して私訴を行うのから付帯私訴というわけです。 戦前の刑事訴訟法にはこの制度があったのが、現行法では廃止されました。それを、被害者保護の一環として復活させようということです。 これによって、被害の回復が速やかに行われる場合は増えると思います。 従来は、刑事裁判が終わったら所定の手続を取ってその事件記録を取り寄せて、それを証拠として提出して一から民事裁判を起こす必要があった(裁判官は別の人が担当する)。そして、高額の賠償金を請求する場合(死亡や重症など大きな被害が出た場合)は、訴状に貼る印紙の金額も、裁判を起こすにあたって大きい負担であった。 これを一体化すれば、刑事事件で判決を下した裁判官が、同じ資料を利用して、直ちに賠償を命じることができる。 しかも、付帯私訴の申立て費用は、賠償額に関わらず数千円くらいの低額になる方向らしい。 たまに、刑事事件の被害者から、被害弁償についての民事裁判の依頼を受けることがありますが、多くの場合において、手続的・費用的に大幅に軽減されることになりそうです。 ただ、刑事裁判を民事裁判と一体化することによって問題はないかというと、やはり、問題を多く含む制度ではあると思います。だからこそ、戦後に刑事訴訟法を改正するときにこの制度が廃止されたのでしょう。 そのあたりの問題については、次回以降に検討してみたいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/03/12 07:43:56 AM
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