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カテゴリ:法律、制度
昨日の続きで、「付帯私訴は便利な制度だけど、問題が生じることも多いだろう」という話。
これが利用される場合のイメージはこういうものでしょう。 刑事事件の裁判官が、検察から提出された調書などの記録を見て「この被告人は有罪、懲役何年」と判決を下す。その裁判官は、記録を見て、その事件の被害者の被害の程度(全治何か月とか)がよく分かっているから、それにしたがって「賠償金を○○円払いなさい」と(従来は別個の民事事件で行われていた)判決を下す。 賠償金はいくらになるかという判断は、被害の程度に応じてだいたいの基準が固まっているので、刑事事件ばかりやってる裁判官だって難なく判断できる(私だってできると思います)。 かくて、民事も刑事も一挙に解決、被害者が事件記録を取り寄せる手間もナシ、ということになります。 ただ、こううまいくのは、その事件が、加害者にとっても被害者にとっても特に争いのない、平易な事案に限られるように思います。 被告人が、自分は無罪だ、と争っているケースであれば、仮に刑事事件で有罪になったとしても、民事事件では一からきちんと審理してほしいと思うでしょう。こういう場合は当然、付帯私訴の判断に異議があれば、通常の民事裁判に移行させることができる。 そこまでではなくても、ありがちだと考えられるのはこういう場合です。 被告人としては、やったことは認めるけど、被害者にも責められるべき落ち度があって、自分にも言い分があると思っている。でも刑事裁判でそれを言うと「反省していない」と裁判官に思われ情状が悪くなるので、あまり言わないでおこうと思っている。しかし、民事事件で賠償金を請求されることになったら、それを堂々と述べようと思っている、そういうケースです。 ケンカや交通事故には、どちらにも非がある場合が多く、被害者にも落ち度がある場合は「過失相殺」(かしつそうさい)によって賠償金が低くなります。 被告人としては、いちおうは反省してるから相手の非を述べ立てる気はないが、かといってそのまま満額の賠償金を認められるのも腑に落ちない、という場合は多いでしょう。 もちろんこの場合、付帯私訴に異議を出せば、通常の民事裁判に移行するわけですが、そこまでするのは、裁判所にも被害者にも悪い気がひける、そんな「微妙な」ケースで、被告人の言い分をどこまで手続に反映させてあげられるかが、運用の上で問題となるように思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/03/13 12:54:30 PM
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