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カテゴリ:法律、制度
先週の小さい記事から。
雇用保険法の改正に際して、厚生労働省の役人が、国会での審議・議決が完了していない時点で、議員に対し「改正案が本日、可決成立した」という内容の資料を配布してしまった。 これに対し一部野党議員が「国会軽視だ」と反発してその日の審議を拒否、そのため、4月の新年度をメドにしていた雇用保険法の改正が少し遅れることになったらしい。 ご存じのとおり、法律の制定・改正は国会によって行われます。 ではその法律の草案、つまり法案はどこから出てくるかというと、国会議員自ら提出することもできるけど、多くは内閣(政府)が提出する。内閣が出してくる法案は、内閣の下にある各省庁の役人、つまり官僚が作っている。 法案を作成する能力は、やはり、国会議員より官僚のほうが上でしょう。 官僚は、国家公務員の1種試験(いわゆるキャリア試験)を受けて、入庁後も法律の解釈や作成の専門教育を受けてきたはず。 国会議員は、選挙での票の取り方とか、利害の調整能力には長けているかも知れないけど、法律については全員が必ずしも高度な教育を受けているわけではない。 法律を作るのも大変な作業で、すでに無数と言っていいほどの法律がある中で、今ある法律と矛盾した内容の条文にならないようにする必要がある。 国会議員の作成した法案は、今ある法律との整合性の確保ができていない場合が多いとか、場当たり的な法案が多いなどとも言われます。 例えば、平成5年ころから数年間の度々の商法改正、特にストック・オプションのための自社株式の取得に関する改正(細かくなるので中身には触れません)は、経済界の要請を受けた一部国会議員が改正の端緒を作ったと思われるのですが、学者からは評判がよくないようです。 最近になってようやく、新「会社法」となってこのあたりの改正が整備されました。会社法の法案を作ったのはやはり官僚でした。 さてそれで冒頭の話なのですが、厚生労働省の役人も単純なミスをしたものだと思うのですが、野党議員も、大人げないなあ、と感じるのです。 これはきっと、法律の制定・改正はいつも官僚主導で行われていて、自分たちの審議は形式的なものに過ぎない、ということが分かっていて、そのひねくれた気持ちが表出したものなのでしょう(もちろん、与党の審議を妨害するという意図もあったと思う)。 国会議員の側に「法律は俺たちが作ってるんだ」という自負や自信があれば、資料の配布時期をちょっと間違えたくらいでひねくれることなく、「官僚のアマちゃんはしょうがないなあ」と苦笑しながら審議に応じたと思うのです。 改めて、法律の制定における官僚主導の実態を垣間見た気がしました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/04/02 07:53:57 AM
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