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カテゴリ:判例、事件
週をまたいで長々と話してしまいましたが、これで終わりにします。
母子殺害事件に関して、事実関係を見ていないし経験もしていない人が、マスコミ報道での事実をうのみにして、懲戒請求をするのはおかしいと思うという話を書いてきました。 懲戒請求のきっかけとなったのが、テレビでの橋下弁護士の発言といわれていて、弁護団の一部の弁護士が橋下氏に業務妨害による損害賠償請求訴訟を提起した。 これも、橋下氏がどんな発言をしたのか見ていないので、法的な損害賠償責任が発生するかどうかは分からない。とはいえ、個人的感想としては(本人はきっとこんな弱小ブログを見てないだろうからこっそり言いますと)、「品がない」と思います。 自分が実際に担当していない案件について、弁護活動を批判することなど、私ならしません。 私自身、この事件に限らず、夜の酒場で隣り合った酔客に私が弁護士だとバレると、 「あの事件の弁護士のやってることはどうやねん」 と聞かれることがありますが、その際には必ず、 「自分が担当してもいない案件についてはお答えする立場にはありません」 と答えることにしています。 私だけでなく多くの弁護士はそう考えていると思うのですが、その辺は、芸能事務所所属のタレントということで、テレビ受けする発言をすることが求められたのでしょうか。 ただこの橋下氏の発言は、もしかしたら 「弁護士会は懲戒請求という手続をきちんと用意しているのだから、不満がある人は、日弁連に脅迫文を送るようなことをせず、これを利用すればいい」 という趣旨で言ったのかも知れない。これならまだわからなくもない。 ただそれにしても、前回書いたような、懲戒請求にはそれなりに面倒さが伴うことを説明してあげなかったのは不親切です。テレビではそれを説明するヒマもなかったのでしょうか。 提訴後の橋下氏の記者会見では、「弁護団は事件の説明責任を果たしていない」と言ったとか。この母子殺害事件の特殊性を前提にすると、何となく理解できる気がしなくもないでしょうけど、一般論としては暴論でしょう。 社会的耳目を集めている事件を扱っている弁護士は、その事件を社会の人々に納得のいくよう説明しないといけないということになってしまうと、依頼者に対する守秘義務なんて守れなくなってしまう。それによって不利益を受けるのは、いつ事件の当事者になるかも知れない国民一人一人なのです。 私はこの事件の弁護団がやっていることが正しいとは思っているわけではない。おかしいと思えることもある。 しかしそれは「そう思う」程度のレベルであって、事実に接していない以上、同じ弁護士としてその弁護活動をどうこう言う立場にもないと思っています。 そして、本当に面倒な手続を踏まえて弁護団を批判したいという人々ならともかく、そうでもない人が、テレビでの発言に煽られて懲戒請求を出すのも、おかしな話であると思います。 この話題はひとまずこれにて終わります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/09/10 08:00:57 AM
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