2008/10/11(土)12:31
麻生総理就任と「庶民の気持ち」について
いつか書こうと思っているうちに時期を逸しましたが、麻生総理の就任に関する話です。
この人はご存じの通り、吉田茂元首相の孫であり、名家のお坊ちゃんです。
民主党とか、左翼的な政党の人は、「金持ちのお坊ちゃんに庶民の気持ちがわかるのか」「庶民のための政治ができるのか」と、麻生さんの総理就任を批判しています。
この手の発言はよく聞かれますが、これらは全く無内容な批判であると思っています。
この手の批判を行う人に対しては、全く同じ批判が返されて然るべきです。
すなわち、「ならば庶民に金持ちの気持ちがわかるのか」と。
世の金持ちの人は、庶民が知りえないような、責任や苦労や、諸々の重いものを抱えていると思います。
そういう金持ちの気持ちがわからない庶民出身の政治家が、金持ちに重税を課し、金持ちがこの国から出ていったとしたら、高い税金を払う人がいなくなって、国の財政はますます悪化します。そしてそれは結局、庶民に跳ね返ってくるわけです。
それにそもそも、
「○○の立場になったことがない人は、その○○の問題を扱ってはいけない」
という発言自体、論理的には全くおかしいと思われます。
私たち法曹に対しても、たとえば、
「会社に勤めた経験もない弁護士が、企業法務を扱うことができるのか」とか、
「免許も持っていない裁判官が、交通事故の裁判を裁けるのか」といった言葉が向けられることがあります。
しかしその論理が通るのなら、
「人を殺したことのない裁判官は殺人事件を裁いてはいけない」
「風邪をひいたことのない医者は病気の治療をしてはいけない」
「子供を産んだことのない男性は産科医になってはいけない」
ということになるでしょう。
もちろん、企業勤めの経験のある弁護士のほうが、より実感を持って企業法務を理解できるかも知れない。病気一つしない医師よりは、多少は病気もする医師のほうが、患者の気持ちはよくわかるかも知れない。
しかしそれはあくまで「気持ち」程度のことであって、その問題を解決するには、その事柄に対する専門的な知識や能力(つまり法律や医学)が必要なのです。
政治の世界はよく知りませんが、たぶん高度に専門的な知識や能力や手腕が必要なものと思われます。
麻生総理には庶民の気持ちをわかってもらう必要はないのであって、祖父から引き継いだ(かどうかは知りませんが)政治の手腕を発揮してほしいと思っています。