2011/03/05(土)00:45
峠
受験シーズンも後半戦。
生徒たちも半数は進路が決定しましたが、残る半数はこれから出願。
先日の公立前期試験で涙を呑んだ生徒達も、落ち込んでいる暇もなく、次の試験に立ち向かわなければなりません。
一方で、彼らの中学生活も着々と終わりに近づいています。
今日で、3年生の私の授業は全て終わり。
最後に学んだのは、教科書に載っている「峠」という詩でした。
この詩、私も教科書で初めて知ったのですが、とても好きです。
人生の分岐点に当たって、自分の進むべき道を決めたときの潔い気持ち、清々しさ、
そして、自分が振り切った「過去」をいとおしく思う気持ち、
そういった様々な感情が余すところ無く表現されていると思うからです。
中学校までは、迷うことなく進学してきた生徒達が、初めて自分の進路を決めて
進んで行こうとしています。
そんな彼らも、彼らなりの読み方でこの詩を味わっていました。
「前に進むことを選択するとき、人は何かを捨てなければならない」
そんな人生の厳しさに、彼らはこれから何度でも直面していくんだろうなあ。
それなりに「決定」し、「訣別」し、「喪失」し、
その度に「あかるい憂愁」を感じてきた、ええオトナの私は
そんなことを感じながら授業をしておりました。
放課後、職員室に帰ると、学ラン姿の男の子が。
3年前に送り出した男子生徒。今日、高校の卒業式だったそうで、挨拶に来てくれたのです。
部活の推薦で、親元を離れて遠方の大学へ行くという彼。
中学生のときは、それなりにいろんな先生方の手を煩わせたものでしたが、
今日はきりっと精悍な表情で、しっかりとした言葉遣いで、進路について報告してくれました。
「大阪に戻った時にはまた報告にきます」という彼を、「待ってるよ」と送り出してから、はたと気づきました。
そういえば、彼が帰省するころには、私はここにいないんだった。
新年度に向けて、転勤願いを出しました。
初任校には、4年間はいないといけないのですが、5年目を終えようとしている今春、担任している生徒達の卒業に合わせて、私も今の学校を「卒業」しようと、もう随分前から決めていました。
その一番の理由は、「早く一人で担任をしたい」から。
うちの学校は複数担任制。そのお陰で、ベテランの先生と一緒に担任をして、担任業務について、直にいろいろ教えていただくことができました。
担任業務も分担できるので、いろいろ楽をさせてもらったと思います。
その一方で、いきなり一人で担任を持って、たくさん苦労をし、その分力をつけていく同期を見て、「このまま複数担任ばかりやっていたら、一人で担任を持つことができなくなってしまう」と、焦りも感じてきました。
3年間見てきた子供達の卒業、そして30代ラストイヤー、転勤するなら今しかない!!
そう心を決めた私も、子供達と同様、「峠」に立っているんだなあ、と今日気付いた次第です。
子供達と違うのは、私の場合、転勤先を選べないってことですけどね
卒業に向けての動きが慌ただしすぎて、自分の転勤に思いを馳せている暇もありませんが、
彼らを送り出したら、心強い仲間に恵まれた、今の職場を「卒業」する寂しさもしみじみ感じるのかもしれませんね。
まずは、今目の前の生徒達が、清々しい気持ちで卒業していけるように、ベストを尽くすことだけを考えていきます!