アルテイル家の人々

2008/02/18(月)22:54

繋がった世界

創作(90)

 今、ここは、今であって、今ではない…。 「不吉な風が吹く、生暖かい硫黄みたいな嫌な匂い」  「ふふ、うふふふふ、あはっ、あははははっ、うくくくく」 「よく戻って来られたものだわね」  「おあいにくさま、でも、ここは、既に、閉じられた世界なのね」 「そう。ここには、もう何もない。虚無を存在として認識できなければ」  「終わっても、終わらなくても…もう、この世界はあってもなくても同じ」 「それで、君が満足であれば、私は何も言うつもりはないが」  「あははははっ、ずっと待っててくれたのに、愚痴の一つも言わないの?」 「さて…それは、終焉の刻までに考えておくべきか」  「選択は、既に決まっているけれど、貴方の気持ちも聞きたかったのにな」 「ここに辿りつけた…ということは、そういうこと。なら、私は依存なしね」 「すまぬ。では、また」  時は廻る、輪の内に。同じ光景に浮かぶ、異なる時空の可能性。だが、針の糸を通すようには、上手くいかないのが、セオリー。  「これで、おにいさまは…もう、離れない、くふふふふっ!?誰、ダレ、だ」  「はて、ここは、どこかで見たような…まあ、適当に以下省略ってことで」 「あ、あれ…あれっ、どうかしてたのかなぁ、あたしったら、こんな格好で」  「まあ、いいでしょう。これくらいの誤差なら、許容範囲内ってことで」 「きゃー、あなたは、へんたいね!」  「いいえ、ただの下僕です」 「げ、下僕…ちょっと、本当に変態じゃないの?」  「失礼な方ですね。私は、決して、怪しい者ではありません」 「まあいいわ。どうせ、暇なんだし…あれ、何か忘れるような気がする」  「いいえ。忘れてなんていません。ただねえ、最初から何も無いだけで」 「面白い方ね、じゃあ、お姫様ごっこでもしましょうか」  「ええ。それで、話しが進みます」 「えっ?」  「なんでもありません。では、今から貴方は、我が主であるな」 「はい。あ、雪だ」  「その頬に伝っているのは、何ですか?」 「わかんない。でも、止まらないの」  「うふふふふ、人間ってのは、面白いものですな」 「しょっぱい。これは、涙かしら」  「左様でござ候。されど、姫に涙は似合いませぬ故」 「くすっ、変わった人ね。でも、慰めてくれてありがとう」  「はて…なんのことやら」

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