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カテゴリ:ランキング
諸般の事情で遅くなりましたが、2011年の1年間で、私ねぼすけが読んだ74冊の本の中で、お勧め(少なくとも読んだ時間がもったいなくない)本の個人的なランキングを、2008年ランキング(104冊中)・2009年ランキング(89冊中)・2010年ランキング(71冊中)に続いて発表します。したがって、2011年以前に出版された本も含まれています。
その前に、私ねぼすけの読書の作法を紹介します。電車通勤の会社までの往復時と出張時の交通機関の中やその他就寝前等の細切れの時間を利用して、2-3冊並行して読むのが読書のスタイルです。以前と少々読書環境が異なり、一週間で1-2冊程度読むペースになっています。 また、本の入手方法は三通り。一つ、この本を読もうと思う際にはアマゾンか楽天で発注、二つ、古本はブックオフなどでぶらぶらと見て気になる本があれば購入、三つ、自宅近くの図書館で比較的読みごたえのある本を借りる、この三つがだいたい冊数にして1/3づつ程度を目標とするポートフォリオを目指しています。 興味がある本のジャンルは、自然科学系(生物学、物理学、地球・宇宙・進化もの)・ビジネス人文社会系(経営・マーケティング分野、心理学・社会科学もの)・今話題の本といった所。ほとんどがノンフィクションで、小説やハウツー本はめったに読んできていませんでした。ただ、今年からは良書の読書対象領域を広げるため、小説にも手を出すこととしました。 小説の手始めに、ここ10年間分の芥川賞受賞作を全て読んでみた後に、その他ここ10年間のベストセラー小説も読むように心がけています。それでは、発表です。その前に、参考に過去のランキングのベスト5を示すと以下のとおり。 2008年ランキング 第1位 銃・病原菌・鉄<上・下> (ジャレド・ダイヤモンド、草思社:2000.10) 第2位 ウェブ進化論 (梅田望夫、筑摩書房:2006.2) 第3位 スタバではグランテを買え! (吉本佳生、ダイヤモンド社:2007.9) 第4位 ルポ 貧困大国アメリカ (堤未果、岩波書店:2008.1) 第5位 フラット化する世界<上・下> (トーマス・フリードマン、日経新聞社:2007.5) 2009年ランキング 第1位 利己的な遺伝子 (リチャード・ドーキンス、紀伊國屋書店:2006.5) 第2位 反貧困-すべり台社会からの脱出(湯浅誠、岩波書店:2008.5) 第3位 希望格差社会 (山田昌弘、筑摩書房:2004.11) 第4位 日本にノーベル賞が来る理由 (伊東乾、朝日新聞出版:2008.12) 第5位 生命-最初の30億年 (アンドルー・H・ノール、紀伊國屋書店:2005.7) 2010年ランキング 第1位 地球46億年全史(リチャード・フォーティ、草思社:2009.1) 第2位 なぜビジネス書は間違うのか(フィル・ローゼンツワイグ、日経BP社:2008.5) 第3位 暴走する資本主義(ロバート・B・ライシュ、東洋経済新報社:2008.6) 第4位 恐竜はなぜ鳥に進化したのか(ピーター・D・ウォード、文藝春秋:2008.2) 第5位 スノーボール・アース(ガブリエル・ウォーカー、早川書房:2004.2) 2011年ランキング 第1位 1Q84 BOOK1-3(村上春樹、新潮社:2009.5/2009.5/2010.4) 言わずと知れた村上春樹作品。話のストーリー展開も十二分に興味深いものがあるが、第1巻から第3巻に進むにつれ、謎が解決されたり・謎のまま残ったり・現実離れしすぎたり等、正確性には色々不満も残ろうが、全体として秀逸な作品でお薦めであることは間違いない。自分自身にとっては、小説を読み始めるきっかけとなる金字塔作品。 第2位 悼む人(天童荒太、文藝春秋:2008.11) 新聞や雑誌などの情報を元に事件や事故の現場を訪れ、その犠牲者を悼む行為を長年続けている主人公=悼む人と、その家族・話題性を元に悼む人を追う記者・犠牲者の加害者として主人公と同行する女性などの心理を描いた小説である。ありそうでなかった、なんて奇抜な設定なのだろう。様々な余韻を残しながら、本書は静かに本を閉じるといった読後感である。 第3位 人類の足跡10万年全史(スティーヴン・オッペンハイマー、草思社:2007.9) 現在の人類の遺伝子に記憶された、母方のミトコンドリアDNA(イヴ遺伝子)と父方のY染色体のDNAの一部(アダム遺伝子)の二つを手掛りに、人類がどこで誕生し、どのようにして地球全体に拡散したのかを気象学や化石の考古学を考慮することで科学的に明らかにした大作。改めて驚くことだが、現生人類は全て「同じただ一つの種」ということである。 第4位 シマウマの縞、蝶の模様(ショーン・B・キャロル、光文社:2007.4) 単細胞である卵から何兆個もの細胞でできた複雑な動物になっていく過程を意味する発生を、DNAだけでは説明できない現象を解明し、進化がどのように起こるかに対する新しい見方を提供する学問領域の本。ちょっとしたDNAの発現タイミングの違いが、動物の形態・デザインに大きな影響を与えることから考えて、どこまで研究しても解明できないことがまだまだ残されるように思えることが良く分かる良書。 第5位 告白(湊かなえ、双葉社:2008.8) ひとつの殺人事件を、被害者の家族からの視点、加害者の視点、加害者の家族の視点、共通の知人の視点から描くことがこれほど面白いことなのか改めて知った小説。登場人物の性格をきっちりと定義付けているからこそ内容も面白い。また、ストーリーの秀逸さという意味の構想力だけでなく、描写や心の動きなど素晴らしい表現力と思える。著者の力量なのだろう。 第6位 生き物たちは3/4が好き(ジョン・ホイットフィールド、化学同人:2009.1) 本書では、「動物の個々の細胞の標準代謝は体重の3/4乗に比例する。この理由は、生物の全ての細胞へ供給する酸素や栄養の通り道である血管を3次元的に配置するネットワーク手法を、フラクタル理論(自己相似性理論)で最適化するとこの3/4乗則を説明できる」学説が有力らしい。ただ逆に、生物学とはかくも未熟なあるいは未完成な学問であったのかが良く理解できる。 第7位 ブラック・スワン 上・下(ナシーム・ニコラス・タレブ、ダイヤモンド社:2009.6) ブラックスワン(黒い白鳥)とは、誰もが白鳥は白いと思っていた時に、たったの一羽でも黒い白鳥が発見されたらその常識は覆される意味の象徴で、「まずありえない事象」を意味している。どうしても人は、ランダムな値をとる事象の分布の形状は、なぜか正規分布であると信じていたし・そのことに何の疑問ももっていなかった。そうじゃないんだ、現実はもっと複雑であり、それは間違っていると筆者は指摘することが新鮮。 第8位 みんなの意見は案外正しい(ジェームズ・スロウィッキー、角川書店:2006.1) 少数の専門家の出す結論よりも、多数の素人あるいは非専門家の平均的結論の方がより正解に近い実例を個々に取り上げる前半のくだりは、翻訳が非常にうまいこともあって引き込まれる。ただ、本書で指摘するように、みんなの意見が集団を賢くする条件として、自立性・多様性・独自の判断・適切な意見集約法が成り立たないと、正しく集団知が機能しない。現実問題として、これらの全ての条件を満たす集団の成立は非常に難しく、群集心理や情報カスケードあるいは観測コスト問題によって、簡単に「みんなの意見」が正しくない方向へ進みうる。その見極めもなかなか難しい。 第9位 眼の誕生(アンドリュー・パーカー、草思社:2006.3) カンブリア紀の爆発、生命大進化がなぜ起こったのかは諸説あるが、本書は「光スイッチ説」すなわち眼の誕生によってもたらされたとする仮説である。これまで、酸素濃度増加説やスノーボールアース説などがあるが、本書のように周辺の事実を一つ一つ取り上げながら、核心に近づいていく論旨は非常に説得力があり・納得させられる本である。眼=視覚は生物の生存にとって最も重要な感覚であることからして、これが真実かもしれない。 第10位 レッド・ゾーン 上・下(真山仁、講談社:2009.4) 内容は、主人公の投資ファンド「サムライ・キャピタル」社長の鷲津政彦が、日本有数の自動車メーカーのアカマ自動車を狙う中国国家ファンドとの攻防を描く物語である。最後には、あっけなく主人公が話を円満にまとめ上げることで終わる。フィクションとは思いつつ、サラリーマンとしては、単純に、鷲津をかっこいいと思ったりする。 今回は、小説と科学本をまとめて評価した。このランキング中、第1位・第2位・第5位・第10位が小説で、その他は科学本である。評価基準は、面白さ・興味深さであり、まとめてランキング化することに自身は違和感はない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.05.11 13:17:25
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