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カテゴリ:ランキング
諸般の事情で遅くなりましたが、2012年の1年間で、私ねぼすけが読んだ50冊の本の中で、お勧め(少なくとも読んだ時間がもったいなくない)本の個人的なランキングを、2008年ランキング(104冊中)・2009年ランキング(89冊中)・2010年ランキング(71冊中)・2011年ランキング(74冊中)に続いて発表します。したがって、2012年以前に出版された本も含まれています。また、2012年は塩野七生作品の大作を中心に読書したため、読了作品種類や冊数が例年よりかなり少なめです。
その前に、私ねぼすけの読書の作法を紹介します。電車通勤の会社までの往復時と出張時の交通機関の中やその他就寝前等の細切れの時間を利用して、2-3冊並行して読むのが読書のスタイルです。ただ、年のせいか・眼のせいか以前より読むペースが遅くなっていることにあせりを感じています。 また、本の入手方法は三通り。一つ、この本を読もうと思う際にはアマゾンか楽天で発注、二つ、古本はブックオフ・新刊本は書店をぶらぶらと見て気になる本があれば購入、三つ、自宅近くの図書館で眼に付いた比較的読みごたえのある本を借りる、この三つがだいたい冊数にして1/3づつ程度を目標とするポートフォリオを目指しています。 興味がある本のジャンルは、自然科学系(生物学、物理学、地球・宇宙・進化もの)・ビジネス人文社会系(経営・マーケティング分野、心理学・社会科学もの)・今話題の本といった所。ほとんどがノンフィクションで、小説やハウツー本はめったに読んできていませんでした。ただ、2011年からは良書の読書対象領域を広げるため、小説にも手を出すこととし、まず、小説の手始めに、ここ10年間分の芥川賞受賞作を全て読んでみた後に、ここ10年間のベストセラー小説も読むように心がけています。従って、2011年ランキング以降は、小説もランキングに入っています。こうした中で、塩野七生作品に出合い、著者のほとんどの作品を読んでしまいました。それでは、発表です。その前に、参考に過去のランキングのベスト5を示すと以下のとおり。 2008年ランキング 第1位 銃・病原菌・鉄<上・下> (ジャレド・ダイヤモンド、草思社:2000.10) 第2位 ウェブ進化論 (梅田望夫、筑摩書房:2006.2) 第3位 スタバではグランテを買え! (吉本佳生、ダイヤモンド社:2007.9) 第4位 ルポ 貧困大国アメリカ (堤未果、岩波書店:2008.1) 第5位 フラット化する世界<上・下> (トーマス・フリードマン、日経新聞社:2007.5) 2009年ランキング 第1位 利己的な遺伝子 (リチャード・ドーキンス、紀伊國屋書店:2006.5) 第2位 反貧困-すべり台社会からの脱出(湯浅誠、岩波書店:2008.5) 第3位 希望格差社会 (山田昌弘、筑摩書房:2004.11) 第4位 日本にノーベル賞が来る理由 (伊東乾、朝日新聞出版:2008.12) 第5位 生命-最初の30億年 (アンドルー・H・ノール、紀伊國屋書店:2005.7) 2010年ランキング 第1位 地球46億年全史(リチャード・フォーティ、草思社:2009.1) 第2位 なぜビジネス書は間違うのか(フィル・ローゼンツワイグ、日経BP社:2008.5) 第3位 暴走する資本主義(ロバート・B・ライシュ、東洋経済新報社:2008.6) 第4位 恐竜はなぜ鳥に進化したのか(ピーター・D・ウォード、文藝春秋:2008.2) 第5位 スノーボール・アース(ガブリエル・ウォーカー、早川書房:2004.2) 2011年ランキング 第1位 1Q84 BOOK1-3(村上春樹、新潮社:2009.5/2009.5/2010.4) 第2位 悼む人(天童荒太、文藝春秋:2008.11) 第3位 人類の足跡10万年全史(スティーヴン・オッペンハイマー、草思社:2007.9) 第4位 シマウマの縞、蝶の模様(ショーン・B・キャロル、光文社:2007.4) 第5位 告白(湊かなえ、双葉社:2008.8) 2012年ランキング 第1位 宇宙を織りなすもの 上・下(ブライアン・グリーン、草思社:2009.2) 理系の人間にとってもよく分かっていない、相対性理論と量子力学の基本が分かり易く頭に入る本。大きくて重い対象を扱う相対論と、小さくて軽い対象を扱う量子理論の双方が出会う場所は、宇宙の創世の時・ビックバンであり、双方の理論を統合しなくてはならないとの主張は全くもって納得に値し、十分に「納得できる説得力」がある。超ひも理論の最先端を走る著者の力量さえも感じられる宇宙論の良書。 第2位 ローマ人の物語 (1)-(15)(塩野七生、新潮社:1992.7-2006.12) 読了の時間はかかるが、間違いなく非常に面白い良書で、いつかは読むべき本。ローマ帝国の成り立ちから帝国崩壊までこれほど面白い歴史本はないかもしれない。筆者は、とことんキリスト教が嫌いなんだなというのが概略の感想。また、西ローマ帝国滅亡は、西ゴート族の族長オドアケルによる最後の皇帝ロムルス・アウグストゥス退位の476年であるが、それ以降を筆者はもはやローマが首都でなく・キリスト教化した東ローマ帝国を、オスマン・トルコによって滅亡する1453年まで存続するのだがローマ帝国とみなしていない。従って、このローマ人の物語には登場しない。歴史解釈には、いろんな見方があるものだ。 第3位 十字軍物語 (1)-(3)(塩野七生、新潮社:2010.9-2011.12) 塩野七生の「ローマ人の物語」・「ローマ亡き後の地中海世界」に続く、最新作。世界史の教科書で、”十字組む(1096)十字軍”と十字軍開始の年代を覚えた十字軍の物語。これも期待にたがわず、とても面白い。第8次まである十字軍は、第3次以降、本来のイェルサレム奪還目的から外れるが、当時のローマ教皇と欧州列強各国との時代背景が良く描けている良書。 第4位 ベイジン 上・下(真山仁、東洋経済新報社:2008.7) 真山仁作品は、最近、エネルギー関係が多く、本書も中国における大規模原子力発電所建設・運転開始後の事故発生の話。フクシマ事故を予言したような形になり、筆者は3.11震災後のエネルギー「専門家」のように扱われていた。小説ラストに原子力事故発生時点を据え、このクライマックスにつながっていく様々な出来事の背景を丹念に追いかけていくストーリーといった内容で、正直「とても面白い」。ささいな所の詳細な描写が、丹念に言葉で描かれ、様々な出来事が真に複雑に絡み合う。震災後の今だからこそ、読んで損はない。 第5位 永遠の仔 上・下(天童荒太、幻冬舎:1999.3) 作者の天童荒太は、決して多筆ではないが、個々の作品の完成度が非常に高い。この作品も、少年期に経験した暗い過去と友人関係が、大人になってからも影響を及ぼしあうことを示したミステリー作品といった内容。長編だが、とても読み応えがある名作である。 第6位 図書館戦争 図書館戦争シリーズ1(有川浩、角川書店・角川文庫:2011.4) 作者の有川浩は、ライトノベルズ著者に分類されるが非常に多才で、本書もバックグランドとなる場面設定とストーリー展開軸が非常に秀逸である。情報管理を巡り、国家治安権力に対抗して組織された図書館を防衛する部隊という設定で、続編話も大変続きやすいし、過激さ故に映像としての映画化やアニメ化も容易で、武器や装備でのマニアックな面白さもスパイスとして振りかけられる。著者は、極めて発想の豊かな人物か、大変柔軟な思考の持ち主か、たぶん両方だろう。 第7位 ローマ亡き後の地中海世界 上・下(塩野七生、新潮社:2008.12・2009.1) ローマ帝国亡き後の地中海世界が、これほど聖戦に名を借りたイスラム教徒による海賊行為に苦しめられた世界であったのかと改めて知る内容。歴史(世界史)は、学生の時に無理やり受験勉強という名の「暗記」でしかなかったが、全く知らない空白の部分もあるものだと痛感する良書。順番としては「ローマ人の物語」の次に読むべき本。 第8位 海の都の物語 (1)-(6)(塩野七生、新潮社・新潮文庫:2009.6-2009.7) ローマ帝国滅亡後、他国の侵略が絶えないイタリア半島にあって、一千年の長きにわたり独立と自由を守り続けた地中海の女王・ヴェネツィア共和国の歴史を示す本。農地も産業も少なく、人口も少ない都市国家において、海軍力を基礎とした貿易と、情報収集・分析に卓越した外交、およびこれらを統率する秀逸な国家形態によって、ヴェネツィアがどのように対応してきたのが綴られる良書。ローマ帝国のような華やかさは全くなく、個人の資質や能力に一切頼ることなく、国家としての組織力や統治力に磨きをかけ続けた、本当にけなげな国家の一千年である。 第9位 わが友マキアヴェッリ (1)-(3)(塩野七生、新潮社・新潮文庫:2010.5) イタリア・ルネサンス期に花の都・フィレンツェ共和国に仕えた官僚で、権力闘争に巻き込まれ職を追われた後に、近代政治学の古典名著「君主論」を著したニコロ・マキアヴェッリの生涯を綴った本。フィレンツェには、綺羅星の如くルネサンスを彩る人物が多数輩出されたが、マキアヴェッリもその一人。読後に、フィレンツェに行きたくなることは間違いない。 第10位 進化の運命(サイモン・コンウェイ=モリス、講談社:2010.7) 本書は、単に生物進化論を扱ったものではなく、宇宙空間における生命の起源が可能かどうか地球という惑星としての分析や、生命がどうやって・どのように発生したかの現時点での可能性のある分析を丹念に示した大作。本書の分析に流れる本流の主張は、生物進化は結果として全く異なる生命種に至る所で「収斂」(環境に適合する生体機能として、出発点が異なっていても結果として同じものになること)が見られることから、ダーウィンの自然選択は正しいとしても遺伝子の発達にはある一定の(良くなる)方向性が存在し、全宇宙的にも結果として「人間型生命体」のみが、意識と知識を持つ生命体として存在するのではないかという主張であり、進化論にしても様々な学説・学派があることが理解できる。 今回も、小説と科学本をまとめて評価した。このランキング中、第1位と第10位が科学本で、その他は塩野七生作品を含む小説である。評価基準は、面白さ・興味深さであり、まとめてランキング化することに自分自身は違和感はない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.05.18 19:18:22
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