2013年お薦めの本ランキング
諸般の事情でまたしても遅くなりましたが、2013年の1年間で、私ねぼすけが読んだ48冊の本の中で、少なくとも読んだ時間がもったいなくないお薦めの本の個人的なランキングを、2008年ランキング(104冊中)・2009年ランキング(89冊中)・2010年ランキング(71冊中)・2011年ランキング(74冊中)・2012年ランキング(50冊中)に続いて発表します。したがって、2013年以前に出版された本も含まれています。また、2013年は色々多忙で、読了冊数が例年より少なめです。 私の読書の作法を紹介します。通勤時の会社までの往復時と出張時の交通機関の中やその他就寝前等の細切れの時間を利用して、2-3冊並行して読むのが読書のスタイルです。ただ、最近、以前より読むスピードが遅くなっていることにあせりを感じています。 また、本の入手方法は大きく分けて三通り。一つ、この本を読もうと思う際にはアマゾンか楽天で発注、二つ、古本はブックオフ・新刊本は書店をぶらぶらと見て気になる本があれば購入、三つ、自宅近くの図書館で眼に付いた比較的読みごたえのある本を借りる、この三つがだいたい冊数にして1/3づつ程度を目標とするポートフォリオを目指しています。 興味がある本のジャンルは、自然科学系(生物学、物理学、地球・宇宙・進化もの)・ビジネス人文社会系(経営・マーケティング分野、心理学・社会科学もの)・今話題の本といった所。ほとんどがノンフィクションで、小説やハウツー本はめったに読んできていませんでした。ただ、2011年からは良書の読書対象領域を広げるため、小説にも手を出すこととし、まず、小説の手始めに、ここ10年間分の芥川賞受賞作を全て読んでみた後に、ここ10年間のベストセラー小説も読むように心がけています。従って、2011年ランキング以降は、小説もランキングに入っています。ここ5年の読書量で、過去15年間程度の小説・ノンフィクションを含めた大体のベストセラー作品は読んだように思えます。それでは、発表です。その前に、参考に過去のランキングのベスト5を示すと以下のとおり。(注:*印は小説) 2008年ランキング第1位 銃・病原菌・鉄 (ジャレド・ダイヤモンド、草思社:2000.10)第2位 ウェブ進化論 (梅田望夫、筑摩書房:2006.2)第3位 スタバではグランテを買え! (吉本佳生、ダイヤモンド社:2007.9)第4位 ルポ 貧困大国アメリカ (堤未果、岩波書店:2008.1)第5位 フラット化する世界 (トーマス・フリードマン、日経新聞社:2007.5) 2009年ランキング第1位 利己的な遺伝子 (リチャード・ドーキンス、紀伊國屋書店:2006.5)第2位 反貧困-すべり台社会からの脱出(湯浅誠、岩波書店:2008.5)第3位 希望格差社会 (山田昌弘、筑摩書房:2004.11)第4位 日本にノーベル賞が来る理由 (伊東乾、朝日新聞出版:2008.12)第5位 生命-最初の30億年 (アンドルー・H・ノール、紀伊國屋書店:2005.7) 2010年ランキング第1位 地球46億年全史(リチャード・フォーティ、草思社:2009.1) 第2位 なぜビジネス書は間違うのか(フィル・ローゼンツワイグ、日経BP社:2008.5)第3位 暴走する資本主義(ロバート・B・ライシュ、東洋経済新報社:2008.6) 第4位 恐竜はなぜ鳥に進化したのか(ピーター・D・ウォード、文藝春秋:2008.2)第5位 スノーボール・アース(ガブリエル・ウォーカー、早川書房:2004.2) 2011年ランキング第1位* 1Q84 BOOK1-3(村上春樹、新潮社:2009.5/2009.5/2010.4)第2位* 悼む人(天童荒太、文藝春秋:2008.11)第3位 人類の足跡10万年全史(スティーヴン・オッペンハイマー、草思社:2007.9)第4位 シマウマの縞、蝶の模様(ショーン・B・キャロル、光文社:2007.4)第5位* 告白(湊かなえ、双葉社:2008.8)2012年ランキング第1位 宇宙を織りなすもの 上・下(ブライアン・グリーン、草思社:2009.2)第2位* ローマ人の物語 (1)-(15)(塩野七生、新潮社:1992.7-2006.12)第3位* 十字軍物語 (1)-(3)(塩野七生、新潮社:2010.9-2011.12)第4位* ベイジン 上・下(真山仁、東洋経済新報社:2008.7)第5位* 永遠の仔 上・下(天童荒太、幻冬舎:1999.3)2013年ランキング第1位 生命の跳躍 進化の10大発明(ニック・レーン、みすず書房:2010.12) 生命進化において、非常に重要な出来事を10個選定し、その謎に対して現時点で分かっている最新の知見やどのような解釈・分析があるのかをニュートラルに示してた本。具体的には、生命の誕生・DNA・光合成・多細胞・有性生殖・運動能力・視覚・温血性・意識・死の10個。どれも証明が非常に困難で、極めて意義深い出来事である。進化論関係の集大成のように思える。また、著者は、参考文献・書籍を手短に紹介しており、それも読んでみたい。第2位 それをお金で買いますか 市場主義の限界(マイケル・サンデル、早川書房:2012.5) NHK教育番組「ハーバード白熱教室」、そしてその講義をまとめた「これから「正義」の話をしよう」の著者である。正直、番組自体は閃光が走る程の衝撃があったものの、前作品では「正義」の話が中心で共感はしなかった覚えがある。しかしながら、本書を読んで著者の本当の考え方が良くわかった。結局、「世の中にはお金で値段を付けて売買することに対し、道徳面や平等面で問題があるモノやコトがある。それでも解決しないといけないならば、それは正義とは何か・なにが公正かの観点を十二分に議論しないといけない」と言うことを主張している。第3位 「婚活」現象の社会学(山田昌弘、東洋経済新報社:2010.6) 著者は、パラサイト・シングルといい希望格差社会といい、今回の婚活も言葉のネーミングセンスが本当に素晴らしい。言葉から社会的ムーブメントを起こしており、間違いなく社会学の権威と言える。また本書の内容も、副題にあるように「配偶者選択のいま」で、従来からあったコンパや職場活動の結婚の配偶者を探す活動が、いつの間にか狭き門の好条件の配偶者をより早く・より効率的・効果的に探索する活動に変質した現象を分析した良書。第4位 フリー からお金を生みだす新戦略(クリス・アンダーセン、NHK出版:2009.12) マーケティング用語のロングテールの命名者として有名な作者の第2弾。ネットビジネスには、フリー(無料)のビジネスモデルが良く適合するが、その構造を分かり易く解いた本。巻末の解説は、10ページそこそこだが、本書のエッセンスを十分に反映した久々に解説らしい解説の名文。曰く、フリーを利用したビジネスモデルは大きく分けて3種類、一つ目「直接的内部相互補助」(ひとつ買うと、もうひとつは無料等)、二つ目「三者間市場」(広告収入等)、三つ目「フリーミアム」(一部の有料顧客が他の顧客の無料分を負担)。三つ目がとてもモデルとして斬新で、有料顧客は5%以上・できれば10%で大成功との解説要約。第5位* 舟を編む(三浦しをん、光文社:2011.9) 著者は、「まほろ駅前多田便利軒」でも、その文才を示しているが、本書も同様である。途方もないことを地道にコツコツと一つ一つ行っていく様を、「舟を編む」と表現上例えて、取り上げたテーマは「辞書編纂」の作業である。読み易く、かつストーリー展開も面白い。第6位 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(ダロン・アセモグル他、早川書房:2013.6) 本書の結論から言うと、独裁者の搾取的ではない包括的に良好な政治・経済制度が、衰退を防ぎ繁栄の基礎と言うこと。ジャレド・ダイアモンド「銃・病原菌・鉄」やポール・コリアー「最底辺の10億人」とも機を一にしており、展開する論調は比較的心地よい。ただ、ローマ帝国の共和制から帝政への解釈やベネチアの政治制度についての解釈が、塩野七生「ローマ人の物語」や「海の都の物語」とも違って、多少違和感あるのもご愛嬌。第7位* オレたちバブル入行組(池井戸潤、文藝春秋:2007.12) テレビドラマ「半沢直樹」の原作本。他に「オレたち花のバブル組」と「ロスジェネの逆襲」と合わせて、半沢直樹3部作を構成している。先に小説を読んでからテレビドラマを見ても面白いという、新しいドラマの楽しみ方を提案してくれた。第8位 シェア からビジネスを生みだす新戦略(レイチェル・ボッツマン他、NHK出版:2010.12) クリス・アンダーセン「フリー <無料>お金を生みだす新戦略」と同じコンセプトで、世の中の新しいビジネスの動きを俯瞰した著作である。現代日本でもシェアハウス、カーシェア、中古本リサイクル等共有をビジネスとする経済は、着々と大きくはなってきている。所有から共有の経済への移行は、今後更にネットの力で加速されるというのが本書の主張の根幹である。ただ、基本に所有経済があってこそのレンタル・共有経済であり、所有がベースにあり続けることは間違いない。同様に、貨幣経済があってこその社会であり評判経済でもある。その意味で、緻密な論理展開なしに、単なる多数の様々な事例紹介の積み上げだけで世の中のベースとなる方向性を決めることは思考停止で、本書はもてはやされ過ぎ。第9位* 永遠の0(百田尚樹、講談社:2009.7) 文句なく面白い。映画化されたが、作品が面白すぎて見ようとはせず。第10位 「機会不平等」論 人は格差を背負って生まれてくる?(橘木俊詔、PHP研究所:2013.9) 同じ論点を扱った前作「格差社会 何が問題なのか」(岩波新書・2006.9)に続く、最新データを分析した格差社会に関する著作である。経済格差が世代を越えて親から子へと繋がり、教育・就労・結婚・賃金など人が営む全ての社会生活面で、現代日本において結果不平等でなく機会不平等が著しく顕著になり、これにより格差社会が進行中であることを統計を通じて示している。本書において、この機会不平等の流れ・連鎖を断ち切る処方箋を示している訳ではない。根本的に連鎖を断ち切ることは本当に難しい。機会平等を実現する手始めとして、例えば非正規雇用の所得向上と最低賃金の引き上げ等でさえ、莫大な政策的・経済的支援策が必要となってくる。ただ現時点では、なぜか格差社会が「社会問題化」はしてはいない様に見えることが、一層不気味。以上、小説とノンフィクションをまとめてランキング評価した。年間ランキングは、既に6年目・500冊近くとなったことから、そろそろ通算の分野別総合ランキングをまとめたいと思う。(時間があれば)