朝日新聞から 分厚い中間層とは
岸田首相のいう「新しい資本主義」の中身が分からないと批判されている。 安倍・菅政権の新自由主義政策、円安と金融緩和策で、勝ち組輸出企業と庶民との経済格差が開きすぎた、と自民党自身が思っているのだろう。リーマンショックに続く年越し派遣村騒動で庶民からの手痛いしっぺ返しを食らったのを思い出したのだろう。選挙に勝ったのは野党が分裂したからで自民党の票が伸びているわけではない。このことは彼らも知っているからこそ、「成長と分配の好循環を通じた分厚い中間層の復活を目指す」と方向転換したのだろう。 昨日の朝日新聞がそのことで数字を出していた。それによれば、平均所得は552万円。ここまで届かない世帯が61%。中央値は437万円だそうな。20年前より100万円少ないという。実質賃金が下がったということだ。1月25日のブログで、『財政爆発』(明石順平著、角川新書、2021年4月発行)を引用して同じようなことを書いた。 さらに朝日は所得100万円~500万円の層のパーセンテージが各10数%としている。所得だから給与以外に社会保険料や税金を払った残りということになる。ちょうどいま読んでいる『数字の嘘を見抜く本』(田口勇著、彩図社2020年発行)によれば、「40歳以下の独身者年収300万円から400万円の典型的な会社員の給与明細」では、24万円の基本給に各種手当を載せ29万円の支給額。健保14,805円、厚年27,450万円、雇用保険870円、所得税6,420円、住民税11,737円とある。(86ページ) 住民税が高すぎる気もするが、おおよそ所得300万円の世帯になる。可処分所得は月25万円。これなら独り身では十分か。これが所得100万円世帯になると東京での家賃を考えると手元には7~8万円しか残らないのではないか。生活保護並み。200万円世帯でも結構厳しい。貧乏人の反乱を自民党は恐れるわけだ。分厚い中間層を作るにはまず春闘での賃上げがどこまで進むかにかかる。株が下落傾向にあるいま、賃上げがどうなるか予断を許さない。 余談だが、『数字の嘘を見抜く本』には一つの数字に騙されるなとある。金の偽物の典型はタングステンだそうで、タングステンは金とほぼ同じ密度(体積1cm3あたりの重さ)(比重?)なのでタングステンに金をコーティングされると見分けが困難らしい。どうするか。音速で比較するそうだ。タングステンは金の音速の1.7倍。超音波検査、音の通りやすさで判断できる。(82ページ) タングステンは1771年に灰重石や鉄マンガン重石から分離されたレアメタルの一種というからアルキメデスはそんな心配をする必要はなかった。