カテゴリ:つれづれ
春は名のみの風の寒さや 谷の鶯 歌は思えど 時にあらずと 声も立てず 時にあらずと 声も立てず 氷解け去り葦は角ぐむ さては時ぞと 思うあやにく 今日もきのうも 雪の空 今日もきのうも 雪の空 春と聞かねば知らでありしを 聞けばせかるる胸の思いを いかにせよとの この頃か いかにせよとの この頃か 日本の歌曲の中で 人の情の気高さを歌った「青葉の笛」も好きですが なによりもこの「早春賦」の詩と曲の美しさに涙するほど感動します ヤマト言葉について考えています ユーラシア大陸の東の辺境に 幾多の困難を乗り越えてたどりついた人々が作り上げた いかなる他の言語からも孤立した不思議な言語です しかもこの地には歴史上二度も同じことが起きています ヤマト言葉が成立する遥かな昔 同じようにアイヌ言葉がいかなる他の言語からも孤立して作られていました たしかに文字は中国から持ち込み 独自に片仮名や平仮名を作ってきましたが 日本と琉球のみが 永い歴史上 各々が無関係に二度も 近隣から孤立した言語を作り上げた不思議さに驚くばかりです 諍いを嫌って逃れた人達 クニを滅ばされて追われて逃げ延びた人達 憧れの土地をめざして大海原を渡ってきた勇者達 そんな人々が作り上げた言葉です 母語はきっと南太平洋の母音を多く使う人々の影響を受けたものでしょう ヤマト古語の母音の多さは 南方系のオーストロネシア語族との近似があるそうですが 現代タヒチ語で母音系を語の頭に持つ言葉は タヒチ語辞書の中の三十%以上もあることからも想像できるようです 日本語の五と七の音節の組み合わせの快さや 和漢混合文の音韻の快さと美しさ またこの国の持つ独自の自然美 それらを想う時ほど私はこの国に生まれた喜びを感じることはありません ゲルマン語系言語やロマンス語系言語の持つ美しさも亦愛する者のひとりですが この星の上でただひとつ 二つの孤立言語を合わせもつこの国が この頃のみっともない出来事の数々を乗り越えて 永遠に平和なれと願わずにはいられません 平成十八年春 石橋正敏 -----------* 昨年の10月にも「アオキ・ワインセラー便り」をご紹介しましたが、石橋さんは私の高校の先輩にあたる方です。(前回の分は↑をクリックしてみてくださいね) 長崎とは遠く離れた、長野県は青木村という所にワインセラーをお持ちですが、年に数回格調高いワインのカタログを送ってくださいます。その中に同封されているのがこの「アオキ・ワインセラー便り」です。 石橋さんの文章はどちらかと言えばちょっと辛口、でも味わい深くいつも静かな滋味を感じます。 今回も「一度公開した文章ですから…」と私のブログで「アオキ・ワインセラー便り」をご紹介することを快諾してくださいました。 (石橋さん、ありがとうございました。原文のままご紹介させていただきました) 高校の音楽の時間に歌った「早春賦」ですが、吉丸一昌さんの歌詞の意味を感じるようになれたのはずっと大人になってからでした。 中田章さん(中田喜直さんのお父様)の、期待感がじんわりと膨らんでいくような右上がりのメロディーとあいまって私の好きな日本の歌です。もぐらさんのブログで唱歌がテーマになり、「角ぐむ」という言葉が春の季語と知った時はとても嬉しく思いました。 言葉は時代と共に、人と共に進化し変化していくものだと思ってはいます。 我が子を含めて時代の言葉を使う若者たちの未来が明るく平穏なれ、と願いながらも日本人として伝えていきたい言葉があることも改めて認識しました。 きっといつの時代にも、新しいことを知り古きを尋ねることを大切にする人がいて伝わっていくものがあるのでしょうね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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