みらいノ素(もと)

2006/06/13(火)22:09

赤い糸

本(165)

もう聞き返すことなどないのに、捨てられないでいる古いカセットテープ。ゴソゴソとかき回していたら、寺山修司の作品の朗読テープが出てきた。『赤糸で縫いとじられた物語』、高校生だった私が寺山修司を読むきっかけになった一冊の短編童話集。 寺山修司が亡くなった翌年、FMで企画・放送されたもの。5日間に渡って毎日1話ずつ、15分の物語が読まれる。それをたまたま録音していたもの。もう何度聴いたかわからないほど、繰り返し繰り返し聴いた私のお気に入り、すごくいいのだ。 KAIがもっと小さい時に聴かせてみたら、内容が難しすぎて全然興味を示さずそれっきり。童話と言っても、出てくるのは浮気性の水夫だったり娼婦だったり黒ずくめの男だったり。間違っても幼稚園の先生が読み聴かせる童話なんかじゃないからね。 その彼も6年生、もう寺山修司に触れてもいい頃よ。今度は気に入ったらしい、よかった。 この前、本棚をもらって整理した折、スペースができたので私の寺山本を並べてみたら10数冊もあったのには驚き。こんなに読んでいたとはなあ(笑)。でも、中身をちっとも覚えていない、ただ『赤糸で縫いとじられた物語』だけは、どの話も暗記できるほど読んだのでテープに合わせてしゃべれるほどなんだけど。 それにしてもすごい才能。童話なのに哲学だし、寺山作品なんだよね。亡くなったのは47歳。あの頃は、こんなおじさんなら大きな仕事をしていても当然ぐらいの目で見ていたけれど、私はあと数年でその歳になるのか。年齢が近づくにつれ、彼はやはり偉大だわと天才だわと、称賛の想いは強まるばかり。

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