『スノウさんは、毛糸玉さんに出会いました』
スノウさんはちょんちょんと毛糸玉をつついて、ころころと転がしていました。
わたくしが、バタルトゥさんのネックウォーマーさんを作った残りの毛糸玉さんです。
ちょんちょん、ころころ。ちょんちょん、ころころ。
なんだかとっても楽しそうに、毛糸玉さんで遊んでいました。
毛糸玉さんはゆるく巻かれていたので、ころころと転がされる度にちょっとづつ解けていました。
わたくしはちょっと心配になりました。
解けた糸さんにスノウさんが足を取られて転んだりしたら大変です。
でもスノウさんがとっても楽しそうに遊んでいたので、わたくしはもう少し見守ることにしました。
毛糸玉を追いかけて、スノウさんがお部屋の中をくるくる回っています。
机の下でくるっくるー、絨毯の上でころっころー、寝台の上にぴょーん。
ふと何かを感じ取ったのか、スノウさんが耳をピンと立てました。
わたくしはさっと扉の陰に隠れました。
辺りを窺うようにくるぅーりと見回して、何もないとわかるとまた毛糸玉さんで遊び始めました。
危ない所でした。
わたくしは扉の陰でほっと安堵の息をつきました。
その時です。
ぽーんと毛糸玉が飛んできて、扉に当たって跳ね返りました。
追いかけてきたスノウさんが意気揚々と毛糸玉さんをキャッチして、顔を上げて、
・・・・・・わたくしと目が合ってしまいました。
「ナ、ナニシテマスカ スノウサン」
スノウさんの遊びの邪魔してしまったわたくしは片言でお返事をしながら、そろり、そろりとスノウさんの様子を窺いました。
スノウさんは毛糸玉さんをキャッチした姿勢のまま氷の彫像のようにカチンと固まっていました。
何とも言えない気まずい空気が流れました。
ころ、ころろ。
スノウさんが前足で申し訳程度に毛糸玉さんを巻き戻しました。
次に体を低くしたまま、じりじりと後ずさりしました。
わたくしの見守る中、スノウさんはある程度の距離を取ると、ぱっと一目散に逃げていきました。
まるで怖いものから逃げるみたいな動きでした。
わたくしはちょっとしょんぼりしながら、毛糸玉さんをくるくると巻き直しました。
その後、スノウさんに会ってもなぜか逃げられてしまいました。
あう・・・。
P.S.
明日、解けないようにした毛糸玉さんをスノウさんにプレゼントして、仲直りしようと思います。
P.S.
プレゼントした毛糸玉さんを警戒して、なぜか遊んでくれません。
昨日はあんなに楽しそうだったのに、なぜですか?
(別人の筆跡で書き込まれている)
あなたが怖かったんじゃないの?
ほら、ネックウォーマーを作ってる時に遊んで怒られてたじゃないの。
それに、扉の陰から覗いてて、片言で話すって、よく考えたらホラーよ。
わたくし気が付きませんでした!
教えてくれてありが……はう!?お母様、わたくしの日記見ちゃだめです!?