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カテゴリ:おしん
おしんが、薪をくべている。
くべながら、竹の棒で、火に向かっていきをふきかけるおしん。 定次あんちゃんは、母ちゃんに会えただろうか? おらが書いた手紙は母ちゃんに無事わたしてくれただろうか 盆がきても家へは帰れない年季奉公のおしんにとって、山から筏に組んで木を流すついでに おしんのいえによってくれるというさだじは、母のようすをしり、 自分のしょうそくをつたえるゆいいつの使者であった。 おしんは、やっと習い覚えた字で母へ手紙を書き、定次にたくしていたのである。 定次が、おしんの家にやってきた。 家の前に、おしんの母「ふじ」と、父「作造」が野良仕事に行く姿でたっていた。 「えがった、野良さ、出る前にと思って急いできたんだ。 二人とも、お達者でなによりだなっす」 そういって二人にお辞儀をする定次。 「おしんちゃんもさぞ、安心するべよ」 ふじが、やっと定次に気づいた。 「おまえーーおしんむがえにきてくれた、、」 「んだっす」 「おしんになにかあったのか?」 「いや、また、筏流す仕事あったから、ついでに。 店には内緒だけんど。」 「わざわざ?」 「これ、おしんちゃんから、おしんちゃんが自分で書いた手紙だ」 そういって定次は、懐から紙を出し、ふじに渡した。 「手紙、、あのおぼこ、字、書けんのか?」 ふじは紙を不思議そうに見ながら言った。 「ああ、しばらく学校さ、いってたからな。なんて書いてあるんか しんねーけど」 ふじは、紙を開き 「ほんてんだー字、かいであるー。お父さん、おしんが書いた字だ。」 ふじが、作造に紙を見せる。 作造は、紙から目をそらし、横を向く。 「おとっつぁん!」ふじが作造に紙を又見せる。 作造は黙ったまま紙をみようとしない。 「おとっつぁんも字、よめねんだ。」 ふじは、定次の方に向き直り、 「おしんが、せっかく書いてくれたのに、うちには誰も字読めなくて」 ふじたちのうしろを、長男が通った。長男のほうをちらっとみて 「これも、野良の仕事さ、忙しくて学校さ、やってやれなかった。」 「それはこまったな、、」と定次。 「でも、おしんは、学校さやってもらったのか、、こんなに字、書けるようになって。 読めなくてもええ、手紙くれただけでええ、それでええ、」ふじはそういって作造の方を見た。 「よかったら、おれが。おれもろくに学校さ、いってねえけんど、カタカナぐれえなら」 「お願いします。」ふじは、頭を下げた。 「ばんちゃんねてるから、ばんちゃんにも聞かせてやりて。 おとっつぁん、正次、一緒にきかせてもらうべ」 そういってふじは、定次を連れて母屋のほうに向かった。 「こだな、いそがしいときに。元気でやってんならそれでええでねえか」 作造と正次は、不服そうだ。 母屋でばんちゃんが寝ている。ばんちゃんに手を貸し、ゆっくりおこすふじ。 「ばんちゃん、リウマチひどくなって。ばんちゃん、おしんの手紙だ よおぐ、聞け」 定次が二人の前に座って、おしんの手紙を読む。 「とうちゃん、かあちゃん、おれは達者で心配いらねえ。 飯も腹いっぱいくわしてもらってる。」 定次がここで、息をのみ、ばんちゃんとふじのほうをちらっと見た。 ふじとばんちゃんが顔を見合わせて喜んでいた、 「だんなさんや、おくさんもやさしいひとだから安心してけろ。 仕事も楽だ。たけぼうはめんこいおぼこで、毎日子守してる。 かあちゃん、ええ、おぼこうむんだぞ」 そこまで読んで、定次は手紙の中のウソにいたたまれなくなったようで 黙ってしまった。 「それだけか?」 ふじがきいた。 「ああ、、」といって手紙をとじる定次。 手紙をうけとったふじが、「ありがてえ」と涙を流している。 「ばっちゃん、おしんははらいっぱいくってるって。だんなさんやおかみさんにも かわいがってもらってるって」 ふじがそういうと、ばっちゃんも涙を流した。 「字も書けるようにしてもらって、、」 二人の前で、定次は歯を食いしばっている。 「ほんてん、奉公さだしてえがった」 そういって二人は、泣いて喜んでいた。 定次は静止して顔をこわばらせていたが、ときたま顔の筋肉がぴくぴくと 動いた、それは、何かに耐えているかのようだった。 「みんな、 おまえさまのおかげだっす、うちはいききもできね。おしんのこと、心配してるだけだ。 これで、肩の荷おりた。かえったら、おしんに心配するなって。」 「おれも、病気がええぐなったと」ばんちゃんも定次に言った。 「おしんが奉公さ、いってくれたおかげでうちは楽してるって。」 ばんちゃんが、 「おしんに、豆の炒ったのでも持ってってもらえ、おれたちは我慢しててもおしんは 他人のうちさいるんだから」とふじにいった。 「ばっちゃん、おしんは腹なんてへってねえ、腹いっぱいくわしてもらってるって かいてあるでねえか。」ふじが笑ってばっちゃんにいった。 それを聞いた定次は、もうこらえきれなかった。 「一年なんかすぐだ、じきもどってくる。」ふじがばっちゃんを諭すように話した。 定次は、目を上げずに、鼻をすすった。 おしんが、外でたけぼうをおんぶして子守をしている。 定次が、材木の上に座っている 「いや、、困った、お前の手紙は、うそばっかならべてよ。 ばんちゃんも涙流して喜んでんだから。」と定次 「ええんだ、それで。つらいことがあったって帰れねえんだから、どうせ、かえれねんだから」 とおしん。 「ばっちゃんはなにしてた?」 「あ、ああ、病気もよくなったって働いてた。おっかさんは、こだなでっかい腹して野良さ出てた。 あれなら、安産まちがいなしだべ。おめえが年季あけて帰るころにはめんこい弟か妹がまたふえてる ぞ。」 「んだら、おれさえ、辛抱するとええんだな。」おしんが、そういって遠くを見た、 おしんの言葉と姿をみて、定次は、心が痛んだ。 「おしんちゃん、おれもまだ年季奉公だから一銭も給金もらえねえ。 でも、のれんわけてもらえて店構えたら、うめえもん、うんとくわしてやるからな。 今は未だなにもしてやれねえけど、我慢してケロ。」そういっておしんの高さにかがんで おしんのかたにてをおき、とくとくとはなす定次。 「ほだなこと、おれは、うちでたときから一人だと思ってるんだ。人さ頼るな、頼られると思うなって 母ちゃんにも言われたんだ。」 「えらいな、おしんちゃん」定次が言った。 そこに突然、軍靴とサーベルの音が聞こえ、軍服を着た兵隊が二人、材木店の中に入っていった。 「兵隊さんだ」とおしん。 「あれは、憲兵だ」定次が言った。 「憲兵?」 「ああ、陸軍のおまわりみてえなもんだ」 「おまわりがなして?」 「へいたいがやんだくて逃げ出したのがいるとかでよ、この前から方々探してるっちゅう話だ」 「逃げたらおまわりに捕まるのか?」 「あたりめえだ、お国の命令にそむいたからな」 中から旦那様と憲兵がやってきた。 「うちの使用人だす、この男も12の時からうちさ奉公に来ているもんだから怪しいものではねっす。」 定次が憲兵に頭を下げる。 「もし、挙動不審のものをみかけたら直ちに通報するんだぞ!」 「へ」と、頭を下げる旦那様と、定次。 やがてとりいれのあとの秋祭りがやってきた。 が、こづかいももらえないおしんにはただ、寂しいだけの祭りだった。 おしんは相変わらず、たけぼうをおんぶして子守をしている。 材木店の前を子供たちが、あわただしく走っていく。 太鼓や笛の音にひかれておしんがふらふらと歩いていく。 出店が出ている。 店の前でばっちゃんにもらった50銭銀貨を手の上に置き、眺めるおしん。 店には、だんごや、あめ、お面などがおかれている。 子供たちがそれらを買っている。 子守奉公の子供など誰もいない。 店には着飾った子供たちがたくさんいた。 店にいったん入るが、おしんは何も買わずに、すぐに出てきた。 祖母から別れの時にもらった50銭銀貨もどんな思いをして祖母が貯めたかを思うと、 とても使えなかったからだ。 秋祭りの後、冬は駆け足でやってきてやがて根雪も積もり始めていた。 雪の中、井戸で水をくむおしん。 「かあちゃん、もう少しの辛抱だ、雪とけたらうちさ帰れる。雪さとけたらうちさ帰れるんだから。」 囲炉裏の前 「何かの間違いでねえのか?」と奥様の声がする。 「おれ、銭勘定間違えるほど、まだもうろくしてねっす」とつね。 「んでも、頭っから人ば、うたぐるようなこと」 「それよりほか、銭が消えてしまう道理がねっす」 「たいさざいのもんが、大根ばもってきたから銭払って、ちょっとこの財布ば、 そこおいたんだす。その時おきてたのはおしんだけだっす。 かまどの火くべてたけんど、おれの目ぬすんで、さいふかきまわすくらい、 やさしいことだっす。」 「つねさん、その50銭は何かに使ったってあきらめるんだな。おしんはよおぐ働いてくれてるで ねえか。ほだな銭くらいで大騒ぎしたらかわいそうだぞ。」と奥様がつねにいった。 「盗人を黙ってみてろってのいうのがす?それではしめしがつかねえでねえがす。」 一向にひかないつね。 「銭のたかではねっす」 「風呂の水、いっぺえになったっす。」おしんが入ってきた。 つねがおしんのほうに向かう。 「おまえだろ!おれの財布から銭もってったの。 ほだなことして何がほしんだ!もう、使ってしまったのか!」 といきなりおしんにどなるつね。 「おれが、、おれが銭盗んだってのがす?」驚くおしん。 「ほかにだれが、ほだなことする?」 おしんはつねの勢いに言葉を失った。 「おめにはな、盗人さすような不自由な思いさせたことねえぞ、おまえがなにももってねえと 思うからちゃんと冬の着物も作ってやった。飯だって三度三度くわしてやってるでねえか。 何がふそくで、、」そういってつねは、おしんに着物をつかんでゆさぶった。 「おれ、してね、おれ、銭盗んだなんて、ほだなこと。」おしんがそういう間に、 つねは、おしんを無理矢理座敷に引っ張り込んだ。 「おしん、着物ぬいでみろ!」とつね。 呆然と立つおしんに 「さっさと脱げ!」と怒鳴るつね。 「おつねさん!ほだなことまでしなくても」奥から奥様の声。 「自分がやましくなかったら脱げるはずだべ。」 そういわれておしんは、着物を脱ぎ始めた。 おしんの脱いだ着物を念入りに探すつね。 おしんは、肌着も脱ぎ、上半身裸で首からはお守りを下げているだけだった。 「そのお守りも外せ!」 おしんがお守りを渡すと、ひったくって中身をみるつね。 お守りの中から50銭銀貨が出てきた 「おしん!」奥様の声。 おちた50銭を拾ったつね。 「これでもしらきるっていうのか!」 「それはばっちゃんにもらったんだ。おれが奉公さ出るとき、ばっちゃんがおれに、、。」 「ほだなウソが通ると思ってるのか」 「うそでねえ、ほんてんにばんちゃんが、、、」 「七つのおぼこさ、年季奉公さ、出さねばなんねえのに、ばんちゃんがこだな銭もってるわけねえべ」 そういうとつねは、その50銭を財布に入れた おしんは、 「それは、おれのだ、返せ!返してケロ!」と言って、つねにとびかかった。 つねともみ合いになるが、つねにつきとばされるおしん。 「つねさん!」と奥様 「甘やかしたらくせになるっす。おしんのためにもならねっす。」 「おれ、本当に何もしてねえ、かえしてけろ。」 「また、ほだなことを。警察さ、突き出されてえのか。今度だけは大目にみてやるけんど 二度とほだなことしてみろ、後ろさ手が回るからな。わかったらさっさとおしめあらってこい!」 裸のままたおれているおしんの顔をめがけて、汚れたおむつが投げつけられた。 初めておしんがつねをにらみつけた。 「ぐずぐずしねえで!ひっかけっぞ!」と言いながら、 そこへ、更に一枚、もう一枚とおむつを投げつけるつね。 顔をおむつで覆われたおしんは、力が抜けたようになってしまった。 雪の中、川でおしんがおむつを洗っている。 いつものように、かごを横に置き、黙って下を向いて洗っている。 冷たさで手が真っ赤であった、その手に息を吹きかけ、冷たさに耐えている。 「ばっちゃん、堪忍してけろ。ばっちゃんが大事にしてた銭なのに。」 そういって、また、おむつを洗い始めた。 おしんの頬に涙がつたった。 おむつを洗い終えて戻ったおしん。 そこへつねがやってきた。 洗い終わったおむつを手に取り、 「なんだ、これでも洗ってきたのか!どうもくせえと思ったらよくあらわねえから おちてねえでねえか。」 「川の水がつめてえからっていって、いいかげんなあらいかたすんな!金盗むために 奉公きてんじゃねえぞ。」 おしんは、顔を上げて、つねをにらみつけた。 「もういっぺん、あらいなおしてこい!」 まだ、つねをにらむおしん。 「はやぐいがねえか!」 おしんは目を伏せ、また、おしめをもって川に向かった 「ちゃんとあらってこねえと何回でもいかせるからな!」 おしんの後ろ姿にむかってつねが更に罵声を浴びせた。 おしんはゆっくりと外に出て行った。 藁靴を履き、おしめのかごを持ち、また、川にきたおしん。 いつもの洗濯場にかがんでおしめをあらいはじめた。 その時、ふと、おしんがたちあがった。 おしんは、洗濯をやめて、かごやおしめは置いたまま、 何かに憑かれたかのように、そのまま、歩き始めた。 おしんのむねのなかで、突然なにかが大きなおとをたててはじけていた。 「やーめた」おしんの辛抱の糸がきれたのである もうあんな店にはかえらない、かえるもんか このかわをのぼれば、ばっちゃんやかあちゃんがいるうちにかえれる。 おしんはふりむきもせずあるきはじめていた 冬の早い夕暮れがいつしか吹雪になってちいさなおしんを つつんでいた。 吹雪の中を薄い着物姿で歩いていくおしん。 頭にも顔にも雪がふりかぶっている、それでもおしんは、 歩いてゆく。 一面の吹雪の中、おしんの後ろ姿が、どんどんと遠のいてゆく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.09.09 00:47:52
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