アツシへ
お母さんがこんな手紙を書くことなんてなかったから
さぞかしビックリしているでしょう。
アツシも知っている通り、お母さんは後三ヶ月くらいなんだってね。
今のお医者さんはすごいね、
余命をすぐに言ってくるなんてね。
時代は変わりましたね。
お母さんがお婆ちゃんを亡くした時は、ひた隠しにされたのにね。
こっちの方がスッキリしていいかもね。
お母さんね、もっとアツシとナミを見ていたかったんだけどね。ごめんね。
あと三ヶ月しか見れないのか、うーん、残念だよ。
アツシ、旅行に連れて行ってくれるって言ってたしね。
お母さん、北海道がいいな。
美味しいものを家族で食べに行きたいじゃない。
それで小樽にも行ってみたいんだ。
アツシ、お母さん頑張って元気になるから、その時は北海道旅行をよろしくね。
…
あなたは家族思いの良い子です。
言葉遣いは汚いけど、それが照れ隠しなんてお母さんはちゃんと知っているんだからね。
だてにあなたを23年間も育ててきた訳じゃないんだから。
あなたとナミは私達の自慢の子供です。
あなたもいずれ親になって分かると思います。
自分の子供がどんなにかわいくて仕方ないか、絶対に分かる日が来ます。
お父さんが頑張って働くのも、お母さんがご飯を一生懸命に作るのも、
あなたたちがかわいいから。あなたたちを愛しているから。
あなたたちと幸せを創り上げたいから。
それが親心だよ。アツシも絶対に分かるはずだよ。
…
けど、お母さん、子供孝行出来てないよね。
あと三ヶ月の間に出来る事って何かを考えたんだけど、お母さんバカだから分からないや。
ごめんね。
だから、この手紙はあなたたちに謝りたくて、今こうして書いているの。
無責任な親だね、無責任なお母さんだね。
ごめんね、お母さん無責任で。
アツシ、お母さんの子供で幸せでしたか?
お母さん、自信がないな。
お母さんなりに頑張ってきたつもりだけど、自信ないよ。
だから、この手紙を読んだら、素直にお母さんに言って。
お母さんの息子で幸せだったか、素直に言って。
もし、幸せだったなら、お母さんもっと頑張っちゃう。
もし、幸せじゃなかったんなら、お母さんもっともっと頑張っちゃう。
大好きなあなたたちの為に、お母さんは頑張るよ。
エイエイオーって頑張るよ。
あなたたちを授かって良かった。本当に良かった。
お母さんは幸せ者だね。幸せすぎるね。
…
あ、しつこいけど、お母さんは夏くらいに北海道行きたいな。
家族で行こうよ、北海道。
きっといいところだよ。美味しいものたくさん食べようね。
アツシの運転する車で、北海道をぐるぐる家族四人でまわるの。
ステキでしょう。
期待してるよ、アツシ。
ナミには別のものを頼んであるから一人だけの手柄なんかにしないこと!
夏に家族四人で北海道行こうね、お母さん頑張るよ!!
字が汚くてゴメンね。
お父さんも、ナミもアツシも、お母さんはみんな愛してるよ。幸せだよ。
アツシのお母さんより