カテゴリ:私の歩いた山と道
わらわら逃げ惑うフナムシを散らして階段を下りきると、岩と海の境界に出た。左手の断崖には、縦に抜けた穴が二つ並んでいた。大門・小門だ。右手の断崖は、上から滝が落ちていた。水は岩に叩きつけられ跳ね返り飛沫は広がって豪快な筋を描いていた。吹雪の滝だろうか。正面は青い水平線が彼方に、両の岩の断崖に挟まれた間から見えていた。海路でこの景勝地に来た人も陸にあがれるように、コンクリートで波止が拵えてあった。
蒸し暑い一日だったので、まずは滝のシャワーを浴びることにした。真下によると無数の飛沫が涼雨となって降りかかった。見上げると水滴は光を含んで輝いていた。荘厳な気持ちになった。 ▲吹雪ノ滝の飛沫を浴びて涼を取る 大門・小門を眺めていると船舶のエンジン音が次第近づいてきて、門の向こうに遊覧船が現れた。一番の奇観であるこの洞門をじっくり見るために、船はしばらくそこで泊まっていた。デッキにはたくさんの人がいて、その中の一人が、門を通してこちらを認めたようで、両手を大きく振ってきた。こちら側には私しかいない。 行き違った乗り物から互いに理由もなく手を振りあって喜べるほど朗らかな性格をしていない私であるが、向こうさんの無邪気な旅の心を損ねては申し訳ない気がしたので、手を両手で大きく手を振り返した。あまり真剣に振ると遭難者と勘違いされるかもしれないので、ゆっくりと振って、そこそこにした。 ▲海路、山路を辿りし者、洞門挟んで相まみえる この日、波は穏やかであった。欲を言えばもう少し、荒々しい波を間近に見てみたい気もした。例えば洞門に高波が当たって砕けて、波の飛沫と滝の飛沫が混じるような光景を。絶壁を見上げるとクルマユリが咲いていた。クルマユリはそういう日本海を何度も見てきたことだろう。 景観を存分に堪能して、蘇洞門を後にした。帰りは往きとほぼ同じ時間で山頂へ戻れた。道を知っていると早く楽に感じられるものだ。 山を降りて海を見にいくトレッキングコース。ここはちょっと面白い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.08.01 01:18:52
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