カテゴリ:私の歩いた山と道
テントを撤収し焼山沢登山道を降りた。ライトなしでも足元は明るくなっていた。ストックを駆使して足早に降りた。
沢と朝の瑞々しさ相まってしめやかであった。頬に山気は冷たくあたり、眠気を封じた。夜露を含んだ道は、靴底を介してもしっとりさが伝わり、強く踏みこめば潤びて破れそうに感じられた。 早朝の青白い微光は写真に留められていた。登りのとき見過ごしていた沢の美しいアングルを幾つかカメラに収めたが、見返してみれば、手ブレか精彩を欠いたのっぺりした画像にしか写せていなかった。 ![]() ▲6時、行雲流水、山歩き 滝近くまで戻ると、朝日が谷間に差し込む時間になっていた。もう朝である。一晩冷え切った体は、夏日の陽気と運動で汗ばむまでに温められた。長袖のシャツを一枚脱いだ。滝で一休みしようか。 巻き道を下り、焼山滝に出た。 「美ヶ原の滝が綺麗だった」と言えば通常疑問符を返されるだろう。だからこれは秘めておくことにするが、今まで見てきた滝のなかでも、焼山滝は印象深い景観を見せてくれた。 木の下闇に朝日影を梳かせて滔々と落ちる雌滝の姿は厳かであった。金細工を施した仏壇のあらたかさよりも、滝のそれはずっと明瞭で思惟へと誘うのであった。 ![]() ▲岩屏風を薄く伝い落ちる雌滝 登山口に戻った。 武石観光センターから今しがた降りてきたばかりの美ヶ原へ、今度は車道を飛ばした。ビーナスラインを通って帰るために。 9時、三峰山展望台に着いた。朝食に野沢菜のおにぎりを買って、かぶりつきながら裏手の展望台へ回った。空は青と白。暑い一日になりそうだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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