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夜明峠はまだか。道は次第に傾斜がきつくなって、尾根筋の近いことが察しられた。道端は笹原になり、木々のは葉叢に空が多く透かされた。もう正午を過ぎた。
夜明峠はまだか、まだか、と心のなかで繰り返し、やっとで合流。参道は林道なみに広い。それまでの山道とのギャップに少々戸惑いを覚えた。
鎖のあるところはすべて鎖に挑戦した。長い三の鎖(68m)を登りきると山頂の社、石鎚神社奥宮の横だった。無事に登攀できたことを拝礼。
山頂には立派な山小屋があった。雨がパラついて、ガスは濃い。小屋は親切で無料休憩可と書いてくれてあった。お昼のおにぎりを食べようと、小屋に入ってテーブルにつき、レインウェアを脱ぎかけたが、あまりに快適だったため、やっぱり外で食べることにした。
そこらの適当な場所に腰掛けて、あえて霧にふかれ、雨にうたれ、風でゴミが飛ばないように気を使いながら、持参のおにぎり2個を食べた。展望は何も見えないが、それでも山らしい。小屋の中は快適だが、快適な空間を求めて歩いてきたのではない。だから雨でも外がいい。霧の中でおにぎりを食べた。
予想以上に時間がかかったので、昼食を済ますと早々に下山した。鎖は登り降りの両方向かけられてあった。でも降りは鎖は使わず、すべて巻き道で降りた。
あとから知ったのだが、社のあるところからもう少し先が石槌山の山頂、1982mの天狗岳である。そこまで行かないと西日本最高峰を踏んだとは言えない。山の本の巻頭写真でおなじみの傾いだ岩の尖峰が、目と鼻の先にあったのだ。視界不良と疲れで、不覚にも弥山で引き返してしまった。
雨はあいかわらず降ったりやんだり。ときおり雲間から日が射して、隣の山の一面笹原の緑を鮮やかに照らした。その景観は思わず足をとめる美しさ。それは次回来たらの予告編だったのか、ちらっとだけで、すぐまたガスに隠された。
16時発のロープウェイに乗車して、全長1815m、標高差850m分を空中散歩。ロープウェイの山頂側の地名を成就(じょうじゅ)という。なにか、成就されたであろうか。望めば遠くは霧中に溶け込んでいた。 <つづく> | |
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