カテゴリ:私の歩いた山と道
蝶ヶ岳山頂でまだ9時前と早かったので、予定通り常念岳へ回った。常念山脈の縦走路を北へ。上高地方面梓川上流付近から登ってくる道「横尾」を左に見る。
蝶槍を過ぎると下りとなり、やがて周囲には草木が茂って、展望はしばらく閉ざされた。トリカブト、シシウド、アザミなど花を見て、小さな池の傍を通り、樹林の中の道へと続いた。 最低鞍部から常念岳への登り返しは400mだそうで、低山の登山に相当する。麓から稜線まで標準コースタイム6時間というような登山道は日本アルプスでは当たり前。信州の山を歩くとき、地元大阪の山とのスケールの違いを毎度のことながら感じさせられる。 灌木はいっそう低くなり、岩を踏んで登るガレた道となった。ときおりガスが流れ、左に槍ヶ岳が姿を現わしたり霞んで見えたりした。前方の常念岳山頂付近はガスに包まれていた。 こんな快晴の日でもガスはかかるのだ。それを考えると、あの蝶ヶ岳からの澄み切った展望に巡り合わせたことは幸運だったと繰り返し思った。 ピークをひとつ、ふたつ乗りこえて、常念岳山頂に近づいた。常念岳の標高は2,857m。標高はあがって、左手に見える槍ヶ岳よりも高い位置にいるように見えた。 大小の岩の散在する道。ついに山頂の標と、たむろする人影が見えた。 ▲常念岳山頂にて 日本百名山の本で北アルプスは火山噴火によって生成されたと記されていた。柱状節理のような溶岩が冷えて固まった形をしているなら「確かに」と思う。ところがこの岩屑状態はどういうわけだろう。荒波砕ける海岸の岩場と同じだ。岩が割れて積み重なるのに、何の力が働いたのか? それを調べようと手にした本が『超火山[槍・穂高]』原山智+山本明著(山と渓谷社)である。実は、この本を読むのに時間がかかって、9月初旬の山行レポートの続きを未だに綴っているという事態になったのだ。(それだけではないかもしれない) この本を読んで、常念岳の頂が海岸の岩場に似ている理由がわかった。なぜなのか、上手くまとめて書こうと思ったのが、なにぶん地球スケールの想像の追いつかない話なので、かいつまんで説明するのが難しい。納得してもらうには、この本を読んでもらう以外に無理だなと思うにいたった。 13時前に常念岳を出発。小屋まで行かず右に折れて前常念へと向かった。あまり高度を下げずに伸びる岩稜の道を進む。 前常念の山頂を過ぎ、岩小屋横を通過したあたりから下りの傾斜がきつくなった。足元は砂地で滑りやすい。神経をすり減らす下りの道が長く続いた。下っても下っても高山地帯の景観である。それが2時間弱でたどり着いた短い木の梯子を下りた辺りで、周囲の植生は森林へ、不思議なほど一気に変わった。 森林ゾーンに入ってからも長かった。キノコをいろいろ撮影しながら、ひたすら下山。 17:10。ようやく朝見送った蝶ヶ岳との分岐に着いた。約12時間の歩き。さすがに疲れた。 次回は蝶ヶ岳から冠雪した穂高を望みたい。もちろん、雪はこちら側にはほとんどなく、あっち側だけの頃に。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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