レムリア編大異変後のヤシマ8
今日は、仕事を休んでのんびりしながら免許の更新に行ってきました。この1ヶ月、視力回復の方法を何種類か試みた結果、見事眼鏡使用の条件が外れました。51歳でも視力はよくなるものです。さて、続きです。スサノオは、クシナダに二言三言何かを話し、彼女はうなずいた。「ヒミコさん、あなたはヤシマの伝説の女神イザナミの力を持っているのですね。叔母のサクヤも違う力を持っていますけど、あなたの力の方が上ですから、気を付けて精進しなさい。」「はい、おばあさま。」ヒミコは素直に答えたが、ミドは伝説の女神のことを聞いてみたくなった。それを察したクシナダは、ミドの方を向いてその伝説について簡単に話した。ヤシマの伝説では、明星から来た女神イザナミと夫の神イザナギがヤシマを作ったことになっていた。女神である彼女の言葉は呪文であり、言霊でもあったため、よいことも悪いことも実現した。夫のイザナギは、ヤシマの陸地そのものを作ったと言われるが、今の人間をも創造したとも言われている。土木技術も、生命工学の知識も持った神であったのだろう。しかし、皮肉なことにイザナミは、自らの子供を産んだ時に死んでしまう。イザナギは、人間を創造した技術で死んだ妻を生き返らせるが、生き返った彼女は、彼が創造した人間を殺戮する狂った女神となってしまった。イザナギは、彼女に与えた命を奪うべく泣く泣く地中に葬ったが、彼女はその時に、夫が創造した人間を根絶やしにするほど毎日殺してやると呪った。イザナギは、それなら毎日それ以上の人間を作ると答えたと言う。「なかなか面白い伝説ですね。人間を創造したといわれている神クラーマやミケーラの伝説とも符合しますし。」ミドが興味深いと感心していると、スサノオはヒミコに注意した。「私は、最初この話は単なる伝説に過ぎないと思っていた。しかし、アストランが死人兵を繰り出してきたり、サクヤがオオヤマツミ家の紋章であり、同家の女性に伝わるカラスの形のあざを霊体にして飛ばしたり、ましてお前は言霊のように神の言葉を操るようになると、そうも言っていられなくなってきた。本当にあったこととしか思えなくなってきたのだ。イザナミの死はお前に対する警告だ。人間本来持っている以上の力を持つと、寿命を縮める。十分に注意しなくてはならない。」クシナダは、ミドの顔を見た。「あなたにも同じことを言わなくてはなりませんね。夫が長命なのは、普段は自分の力をほとんど使っていないからなのですよ。もう手遅れなのかもしれませんけど、これ以上命を縮めるようなことはしないでくださいね。」確かにスサノオは、普段はすべての目を閉じて超能力を使うことなく生活していたので、ミドは、微笑みながらうなずいた。「その通りですね。だから、ヒミコさんを丈夫にしようと考えたのですが。」タケルは、そのために自分ができることがあるかどうか、クシナダに聞いた。「クシナダおばあさま、私ができることはありませんか。」クシナダは少し躊躇したが、夫が促すのでまずタケルの覚悟を聞いた。「タケル、あなたのような若い男には大きな試練になるかも知れませんが、やり通す覚悟はできていますか。」今度は、タケルらしく即座に答えた。「やるしかありません。」クシナダは、頼もしい孫に感心しながら話し始めた。「では、教えましょう。タケルにも、愛すると言うことは、心と体の二つの面があることはわかるでしょう。」「はい。」ヒミコは、タケルの顔を見上げた。「心配しなくていいわよ。タケルまだ誰とも寝てないから。」サクヤが彼女の思いを感じておしえると、ヒミコはほっとした顔をし、タケルは苦笑した。「心と体は、二つ揃ってこそのもので、揃わなくては完全とは言えません。しかし、ヒミコはまだ女の体になっていません。ですから、あなたはヒミコが女になるまで心だけで支えなくてはならないのです。わかりますか、この意味を。」タケルは当然のように答えた。「要は、私が我慢して待てばよいのですね。」タケルは意志も強固だったのまた即座に答えたが、クシナダは微笑んだまま付け加えた。「それだけでは無いのですよ。ヒミコに迫られても我慢できますか。」すると、タケルは笑いながら正直に答えた。「それは確かに難しい注文ですね。ついふらふらとなりそうです。」逆にヒミコが、口を尖らせて猛然と抗議した。「おばあさま、私そんな真似はしません。私から誘うなんてはしたない真似は。」クシナダは、娘のサクヤに目配せした。「では、試してみましょうか。」祖母に迫られると、ヒミコは後ずさりしてタケルの後ろに隠れた。「お母様、試してみてもよろしいけど、ヒミコには刺激が強すぎませんでしょうか。」サクヤは躊躇したが、クシナダは娘を促した。「いいえ、その喜びを知ることも必要です。婚約者の前ですが、やっておしまい。」すると、ヒミコは恐怖に駆られてタケルにしがみついた。「いや、恐い。」しかし、その瞬間を捕らえてサクヤは彼女に邪眼を使った。「ぎゃっ。」ヒミコは一瞬体を硬直させた後、タケルに強く抱きついた。「あーん、許してくださいませ。」嫌がりながらもヒミコは小さな胸のふくらみをタケルの背中に押し付け、彼の足に股間をすりつけていた。「嘘、そんな…、はしたない。」ヒミコは、喘ぎながらトロンとした目でタケルを見た。タケルは、彼女の意外なほど悩ましい姿に抱きたい衝動を覚え、母に抗議した。「母上、これはヒミコにでなく、私に刺激が強すぎます。」ヒミコの反応を確かめたサクヤが邪眼を解くと、彼女はタケルの足元に崩れ落ちた。そして、呆然とした表情で数秒間沈黙した後、事情が呑み込めたのか、彼の足にすがって大声で泣き出した。サクヤは、息子ににらまれたし後味が悪かったが、クシナダはタケルに抱かれたヒミコに強い口調で諭すように言った。「今のが性の喜びです。幸福な夫婦生活を送ることができれば、あなたもあの喜びに十分浸ることができるでしょう。しかも愛する夫の体で。」タケルはヒミコの額にキスすると、彼女を慰めた。「泣くことはない。ヒミコの違った魅力を見せてもらえてうれしいよ。早く本当の夫婦になることができるように、体を養生しようね。」ヒミコは、泣き止むとタケルをまたうっとりと見つめた。「いやはや、ヒミコさんもなかなかのものでしたね。」ミドがスサノオの顔を見ると、彼は笑った。「お前は、今夜二人に迫られるぞ。」すると、タケルはつい本音を言ってしまった。「父上はいいなあ。」すると、ヒミコは涙を拭きながら彼にささやいた。「私が包んで差し上げられるようになるまで、待っていてください。」サクヤは、それでも息子を羨ましく思った。「タケル、あんたの方がずっと幸せよ。私の時は非常時だったし、3番目だったし、ミドにもそんなにロマンチックにささやいてもらえなかったわよ。」ミドも笑い出した。「確かにそうだな。私も3人の妃も、異変前で自分の幸福よりも生き残りを優先せざるを得なかったしな。サクヤの時などは、婚礼を前にして私は自分の葬式の話をして呆れさせたものな。でも、もうそろそろ個人の幸福を考えてもいい頃だな。」タケルは、父に疑問をぶつけた。「父上。私には心に思った相手はおりませんでしたし、ヒミコさんとはこの上はないと思える結びつきですから言うことはありませんが、他の兄弟姉妹たちの結婚の時は、個人の感情をどう考える積もりですか。」ミドは、面白い質問だと思った。「この世の中、面白いことに前世の因縁は見えない網のごとく張り巡らされており、絡まってもいる。親兄弟もそうだが、お前のように前世でも離れがたき夫婦だった組み合わせも多い。好き合う、引かれ合う感情自体にその因縁は作用していることは、お前自身の体験でもわかっただろう。」タケルはうなずいた。「その点は肯定せざるを得ません。」ミドは、そこで優しく微笑んだ。「しかし、お前とヒミコさんの結婚は、誰の目から見ても政略結婚でもあるのだよ。それも確かだろう。」タケルは、それも確かなことだとは思っていた。「だからこそ、ほかの兄弟たちはどうなるのかな、と心配したわけです。」ミドは、別の方向から話を進めた。「逆も考えられるのだよ。たとえばマルドゥークにヒンダスの王女をもらったとする。これは、一面では政略結婚だが、二人が幸福になるのなら、それでよいではないか。」タケルは反論した。「ですが、もし思い人があった場合、その仲を裂くことは二人の幸福につながるでしょうか。」全員、二人の議論の行方に注目した。「私は、仲を裂くことは極力避けようとは思っている。ただし、父として、結婚生活の先輩として、この結婚はどうも疑問だと思う場合は別だ。いくら二人が好き合っていても、幸福な家庭を築くことは難しいと思える場合は、敢えて仲を裂くこともする積もりだ。前世の因縁は、時として非情な選択を迫ることがある。不思議なものだが、転生していく中では因縁のある相手同士でも、その関係を結ぶことが幸福なことも不幸なこともあるのだ。私自身の未来を話すと、今の妻3人とはこの先も夫婦になったり、親子になったりする。その中には私がトゥーラを殺してしまう人生もあるし、逆に殺される人生もあるのだ。これは、幸福とは言いかねる。だから私は、父親の立場からそのような選択を子供たちがすることを防ぐ義務があるとも思っている。たとえそのことが二人の仲を引き裂き、前世の因縁に反するものであったとしても、別れは一時的なものだ。別の結びつきを大切にできるのなら、その人生はその方が幸せで実り多きものになるだろう。」もっともなことだが、引き裂かれた二人はどうなるのか、タケルは父の意見が聞きたかった。「引き裂かれた相手とは、どうなると考えますか。」「別の人生でやり直せば良い。お互いが幸福になる時を選んでな。」それはそのとおりなのだが、どうすればわかると言うのか、それが問題だった。「確かに父上の言われることは正しいのですが、神の心を持った父上にしかできないことでもあることが問題ですね。」ミドは、息子の言い分ももっともだと思ったが、わかることもあることを指摘した。「いや、世間的、社会的には、ある程度は理性によって判断できるだろう。」続く。画像は、昨日の逆アングルの、メジロを見つめるハルです。