065058 ランダム
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ネオリアヤの言葉

ネオリアヤの言葉

みかんのすじ



恋は
みかんを食べるときと似ている。
ひっくり返して
中心から外側に向かって
なかの実に爪を立てて傷つけないように
丁寧に皮をむく。
そして
皮をむくよりもずっと馬鹿丁寧に
白いスジをはがしていく。
そんなに真剣に
そこまで取らなくてもいいのに、
というほどに。
だんだんと
スジごと食べたほうが躰にいいことを知り、
あまりに真っ白でないかぎり、
皮をむいたままで食べるようになる。

恋は
みかんを食べるときと似ている。


*****


私が独りでも
十分にちゃんと生きていることを
あなたに伝えるのは
伝えるあなたがいるから
私が独りでも
十分にちゃんと生きていられるから


*****


キッチンのお湯がわいて
あなたのことを想い出す。
おかしいでしょう。
なぜか
あなたが急いで火を止めに立ち上がってくる気がする。
私は
あなたがそばに立って、
ガスの火を止めてくれるのを
しばらく待っている。
沸騰したお湯の底から
大きなマグマのような泡が
次々と浮かび上がってきて、
あなたの不在を私に知らせる。
そこで初めて
私ははっとしてあきらめの微笑みをこぼす。
そして
自分の手で火を止める。

ねえ。
火を止めても
すぐには泡が消えないのを知ってる?
保ったままの熱が
余韻にしては強すぎる勢いで
沸騰を続けるの。
おかしいでしょう。
やっと火の熱さから解放されたはずなのに、
まだ沸騰したがってるみたい。

キッチンで
私は泣きそうになる。




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