カテゴリ:カテゴリ未分類
長い長いエスカレーター。
キミの後ろに立って、その肩におでこをくっつける。 キミの頭が少しだけ傾いて、 わたしの体温を受け止めてくれる。 おなかいっぱいだねと笑いながら、 大雨のなか、ひとつの傘を分け合って、 半分ずつ濡れながら走る沿岸線。 キミはそのくせ、アイスは別腹だと云う。 いつまでたってもニュースの流れない深夜番組が放つ、 青白い光のなか、投げ出したふたりの足がわずかに触れる。 まるで兄弟のように、陣地を決める。 「この枕からこっちはわたしの場所ね」 「ずるいな。じゃあテレビのリモコンは俺のー」 「それ全然ちがうじゃん」 CNNのキャスターの声だけが響くなか、 キミの寝息が静かにまぎれこむ。 その手から奪ったリモコンで、わたしはその夜を閉じる。 キミの頬に残る傷跡に、キスをする。 キミの指が、わたしの耳たぶに触れる。 おやすみの言葉のかわり。 わたしはきっと眠れないんだろうと想いながら。 ねえ知ってる? キミとわたしは、ここのところ、毎週のように逢ってるんだよ。 「そっちであってこっちであって、不思議だねー」 キミから送られてきたメールが眠りの淵で蘇った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|