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Mizumizuのライフスタイル・ブログ

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2009.06.02
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<先日のエントリーから続く>

ローラン・プティは、ヌレエフがプライベートでも天性の誘惑者だったと言っている。ヌレエフの視線は、「あなたを好きになりそうなんだけど、いい?」と言っているかのよう。そうして、狙った獲物を手に入れると、いとも簡単に新しい獲物のほうへ行ってしまう。

ヌレエフが最も愛したのは、若い男の子で、やはりというべきか、筋肉質な肉体と尽きせぬ活力をもった年下のダンサーをとりわけ好んだ。ヌレエフはソレント半島の沖にある島に邸宅を構えるが、ロココ調の家具のおかれた部屋の豪華な装飾を施した壁には、そうした全裸の男性たちの絵画が飾られていたという。

アメリカ人ダンサーでヌレエフの愛人の1人だったロバート・トレーシーは、『Nureyev and me』の中で、39歳のヌレエフが愛したのは、23歳の自分の「若さ」だったと語っている。2人はバレエ公演のリハーサルで出会い、すぐに関係を持った。ホテルの部屋に誘ったのは、もちろんヌレエフのほう。

「ヌレエフは私の脚とそれにジャンプが好きだった。私たちはほとんど一目で肉体的に惹かれあった」(トレーシー)。

もっともトレーシーは、ヌレエフを独占しようと思ったことはなかった。できるとも思っていなかった。ヌレエフには「300万人」(←いくらなんでも、そりゃないだろうが)の若い男の子がいた。もちろんトレーシーより若く、もっとナイスなバディ~を持った取り巻きも。

トレーシーもヌレエフに束縛されたくなかった。トレーシーは最初のうち、世紀の大スターとたいしたことないダンサーの自分が、「長続きするはずがない」と思っていた。だが、2人の関係はやがて友情に落ち着き、ヌレエフの死の直前まで続いた。プティの言う、「ジュピターのように移り気で、ユノのように貞淑」なヌレエフらしいエピソードだ。

女性との関わりで言えば、トレーシーはヌレエフから、「3人の女性と関係をもった」と聞いたという。40歳を超えたヌレエフは息子を欲しがっていた。ヌレエフによれば、彼の子供を妊娠した女性が2人いたが、どちらも中絶してしまったという(←なんか、ジャン・コクトーみたいなことを言ってる)。

ヌレエフは、プティにはこんなことを言ったという。

「僕はマーゴと結婚すべきだったかもしれない。彼女こそ僕の運命の女性だった」

ヌレエフはエイズを発症したあとも、それを一切公表しないまま舞台に立ち続けた。晩年は、胸にコイン大の金属片を埋め、2~3日ごとに金属片についたネジを抜き、そこから注射器で心臓を拡張する液体を注入していた。そうやって彼は舞台に立ち、偉大なダンサーの役を演じ続けた。病状は悪化する一方で、彼を栄光の高みに引き上げた筋肉は破壊されていたが、それでもヌレエフは偽りの健康を装った。何も知らない観客からブーイングを浴びせられると、蔑視のポーズで答えることを忘れなかった。

ヌレエフがこの世を去ったのは、1993年1月6日。

「彼の死に顔は、彼が愛していた若者の顔立ちのようにほっそりとして美しかった。それは井戸の中に映し出された自分の裸体にうっとりと見とれ、悦楽とともに自らに恋焦がれたナルシスが乗り移ったかのようだった」(『ヌレエフとの密なる時』)

ジャン・コクトーの作品は未来を予見するとジャン・マレーは言った。事実『双頭の鷲』では、ジャン・マレーとエドヴィージュ・フィエールの死期を予言するような台詞がある。そして、1967年の『若者と死』で健康なヌレエフが演じた、「カクッ」とうなだれて死んでいく若者の顔は、プティのこの描写の予言のよう。白々とした空間で一瞬アップになるヌレエフの死に顔は、まさにナルシスのように美しい。

このときの撮影では、ヌレエフはパウダーをはたきながら、
「僕のスクリーン映りはどう?」
とプティに、いたずらっ子のように微笑みかけた。
「マリリン・モンローよりステキだよ」
とプティが答えると、ヌレエフは大ウケして笑い転げた。そして喜々として準備にいそしんだという。

14歳も若く、強靭で、無限のエネルギーに満ちていたこの若者の死を、プティが看取ることになろうとは。

比類なき若者、ヌレエフとの日々は、彼が永遠にいなくなったあとも、プティの心を去らなかった。ヌレエフは誰のものにもならない人だった。私のヌレエフ、君のヌレエフ、彼のヌレエフ、私たちの、あなたたちの、彼らのヌレエフ。1人1人にとって、それぞれのヌレエフが存在する。

『ヌレエフとの密なる時』は、プティの見た夢とも妄想ともつかない、2人の「共演」で終わっている。

それはヌレエフの死から4年たった1997年のある日。ヌレエフが歌いながらプティに近づいてきた。2人は数歩の距離で向かい合って立ち、それから一緒に踊り出した。その場でゆっくりと回転を始め、どんどん回転を速めていくと、大勢の群集がやって来て、観客となった。ヌレエフとプティはひたすら踊り続けた。

そのときプティは、彼が愛してやまなかった不世出のダンサーが踊った作品の中でも、とりわけ素晴らしかったシーンを見る。『白鳥の湖』で黒のビロードに金と銀の装飾をあしらった衣装を着た王子役のヌレエフが、オデットを探しながら白鳥から白鳥へと走り抜けていくのだ。

回り続けたプティとヌレエフのダンスがフィナーレを迎えようとしたとき、ヌレエフはまるで魔法にかかったように、プティの、そして集まった群集の目の前から消えてしまった。

プティとヌレエフは現実では、ほとんど常に振付師とダンサーだった。2人の世界は時に交錯したが、仕事の面では軋轢も多かった。プティという惑星の近くを、忘れがたい強烈な輝きを放ちながら、時折通過していく流れ星、それがヌレエフ。

だが、コクトーの小説『恐るべき子供たち』のラストシーンを彷彿とさせるようなこのエピローグは、世界的振付師としてではない、1人のダンサーとしてのプティの魂の告白だ。プティはただ踊りたかったのだ。1人のダンサーとして、1人のダンサーであるヌレエフと。ローランとルドルフと観客と、他には何もない世界で。

<終わり>












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最終更新日  2009.06.02 18:43:26
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