2009/08/26(水)15:28
堕ちた名店、カオソイ・サムージャイ
<きのうから続く>
チェンマイ国立博物館は思ったほどたいしたことなく、3時間どころか1時間とかからずに出てきてしまった。
お昼にはまだちょっと早いが、予定どおりスーパーハイウエイを東にぐるっと回り、ファーハム通りに入って南下、ワット・ファーハム至近のカオソイ・サムージャイに行ってもらう。
ネット上の評判はすこぶるよい。「昼時は店の外まで行列がのびる」らしいので、11時ちょっとすぎの今なら、それほど混まずに食べられるかもしれない。
ソンテウはワット・ファーハムの境内に駐車。
そして、カオソイ・サムージャイに入ってみると…
がら~ん
なんか、予想と違う。
広い店内には、カオソイ以外にも屋台風にいろいろなモノが売られているが、客より店員のほうが多いくらい。
これで本当に昼時に行列になるほど、客が来るのだろうか??
席に座り、メニューをもらって…
えっ?
値段が書いていない。
メニューに値段がないって、怪しいじゃないの。
チェンマイの食べ物屋は屋台だって、値段をわかりやすく書いてあるところがほとんどだ。なんかヤな感じ。
でもまあ、有名店だし、ここでいきなり「カオソイ1000円」なんてことはあるまい。
とりあえず、連れ合い牛肉、Mizumizu豚肉でカオソイを2つオーダー。
見ると、壁に写真入りの大きなメニューがある。
あっちには、値段が入っているのかと席を立って壁の写真メニューを見に行った。
やっぱり値段が書いてない…
とはいえ、他のメニューもいろいろあって美味しそうではある。
「ここのローカルフードを食べたいの?」
急にハッキリした英語で話しかけられた。
声のほうを振り返ると、中国人の男性が奥さんとおぼしき中国美人と食べている。
「ここは、カオソイが有名だよ」
明らかに初めて入ってきた観光客丸出しのMizumizuに、助け舟を出してくれたよう。
「あ、カオソイは、もうオーダーしたんです」
とMizumizu。
「ところで、カオソイっていくら?」
「30バーツ」
ホッ。それならラムドゥアンの小カオソイと同じだわ。
「カオソイ以外だと、ローストチキンが美味しいよ」
と中国人男性。
「ぼくたちも今食べてる」
中国人の男性というのは、どこでも非常に自信に満ち溢れている。「頼れそう」で「キレそう」な第一印象は、とても感じがいい。
ま、たいがい見かけ倒しなんだけどね。自信持っている人が、実際に十分な能力があるかというと、そんなことはないワケで。
ただ、こうやって積極的に声をかけてコミュニケーションとってくる能力は、日本男性にはない彼らの武器。
「これは、どう?」
一応、名物と聞いた豚の串焼き、ムーサテーの写真を指差してみる。
「ああ、それもいいよ。ぼくはローストチキンのほうが好きだけど」
と中国人男性。
そこへちょうどMizumizuたち担当のウエイターが通りかかり、
「ムーサテー?」
ともう注文を受けたかのような雰囲気。Mizumizuが席に着くと、ムーサテーを運んできて見せる。
実はラムドゥアンでも同じようなデモンストレーション(?)をされた。そのときは断ったのだが、今回は食べてみることに。
ピーナッツソースのほのかな甘さが、薄い豚肉とよく合う。うん、これは美味しい。
パクパク食べてると、お待ちかねのカオソイが運ばれてきた。
小皿の上に紫タマネギ、高菜、ライムがのっている。
ささ、食べましょ、食べましょ。ラムドゥアンとどっちが美味しいかな。
ところが…!
「あれっ?」
箸をつっこんでスープの底に沈んだ麺を少し食べたところで、Mizumizuがまず気づいた。
「どうしたの?」
「麺がものすごく少ないよ。もう終わっちゃった」
「え?」
連れ合いも、箸を動かす。
「ホントだ。ほとんど入ってないじゃん」
こ、これは悪質でしょう!
だって、見た目にはわからないのだ、中に入ってる麺の量なんて。カオソイは生麺と揚げた麺の2種類が入っていて、上にのっているのは揚げ麺のほう。こちらの量は、まあ多くはないが、そこそこ普通だったのだ。ラムドゥアンのように小と大に分かれているわけでもない。
箸つけてしまってから、「中の麺が少ない」ってクレームもしにくい。
おまけに、この店、ウエイターが身体的ハンディキャップを負っている人が多い。身体の悪い人に向かって、食べた後になって、「麺がほとんど入ってないじゃない!」なんて文句つけるのは、まるで弱いものイジメみたいで気がひける。
こういうウエイターを使うのも意図的ですか?
最初は、「へ~、ハンディキャップ持ってる人も、普通に働いているんだ。いいじゃん」と好意的に受け止めたのだが、こういうことをされると、
この店ってば、こういう社会的弱者の人を安く使ってるんじゃ?
と急に疑いの芽がムクムクと育ってきた。
11時半になっても、お客はほとんど来ない。すべての客に「ほとんど麺の入ってないカオソイ」を出しているのがどうか知らないが、「行列のできる店」だったはずが、閑古鳥が鳴いてるなんて、なんかあるでしょ、理由が。
麺のことはおいておいても、味もラムドゥアンのがいい。ちょっといい、ではなく、ずっといい。中に入っている豚肉もまったく美味しくなかった。ラムドゥアンとは雲泥の差。スープもあれほどネット上でみんなが感激してる店のものとは思えない。
味なんてものは、結局は個人の嗜好なので、好き好きと言ってしまえばそれまでだが、やはり普通に考えれば、この店は、「味が落ちた」のだと思う。
こんなに、賞状(?)が並んでる店なのに。
やれやれ。
名店もこうなっちゃ終わり。
ほとんど麺の入ってないカオソイを出してコスト削減を図るなんてこと、雇われ従業員が自ら考案するワケがない。上から言われてやってるに決まってる。
安くてうまいと評判になる→客が押しかける→店を改築する(サムージャイの場合は、拡張したらしいが)→味が落ちる(あるいは極端に量を減らす)→評判が落ちる→客が来なくなる→店はあせって、またどこかでコストを落とそうとする→さらに客が減る
こういうパターンは古今東西を問わず、ひんぱんに起こる。「名店」のオーナーが陥りやすい「人間の業」かもしれない。
美味しいものを作るのはセンスだけではなく、やはり手がかかるのだ。最初は「美味しいものを食べてもらいたい」という純粋な気持ちでいても、客が増えてくると、だんだんに邪心が入りこんでくる。「オレのこんなにうまい料理がこの値段じゃ、安すぎない?」「ここまで手をかけることないか。ちょっと効率化を図ろう」。
それを本人は邪心と気づいていないかもしれない。
だが、こうやって名店は堕ちていく。「値段と味のバランス」について、客は口には出さずとも非常にシビアだ。そして、いったん堕ちた評判、つまりは信頼を取り戻すのは、並大抵のことではない。
結局のところ、商売というのは、「ラクに儲けたい」「手を抜きたい」という目に見えぬ邪心との耐えざる闘いなのだ。サムージャイのオーナーは、明らかに、思いっきりわかりやすいカタチで邪心に負けている。
ちなみに会計のほうは、マトモでした。
カオソイ30バーツX2
ムーサテー11本で30バーツ(ただ、ネット上の情報だと1本からでも頼めるよう)
水10バーツ
で100バーツ(300円)。
ふと見たら、ソンテウの運転手が奥さんと奥で食べている。彼らにはマトモな量の麺が入っていたのだろうか。地元民には、ここまで露骨なことはしない気がする。
サムージャイを試そうと思ってる日本人観光客の皆さん!
中の麺が異様に少なくないかどうか、注意してください。そして、「ほとんど入ってない」というフザケタ真似をまた繰り返すようなら・・・
Mizumizuの分もハッキリ怒ってください!
今考えたって、あれはクレームするに十分な事件でした。