ベンツが考える自動運転の未来
米グーグルが始めたプロジェクトをきっかけに、世界の大手自動車メーカーはここ数年、自動運転車の開発にしのぎを削っている。既に市街地で実験走行を繰り返すまでになっており、同分野を切り開いたグーグルを自動車メーカー大手が「技術面で追い越した」とさえいわれている。地域限定などの制約はあるにせよ、ここ数年以内に自動運転車が登場すると予測する業界関係者が増えている。 そうした中で、メルセデス・ベンツが発表したF015ラグジュアリー・イン・モーションの特徴は、車内シートが4席対向で設置されている点。車の運転から解放された搭乗者が楽しく会話をしながらドライブすることが基本的な考え方となっている。ドアの内面には高精細のタッチパネル・ディスプレーがあり、それぞれの搭乗者がマップやネットアクセスなどを楽しめるようになっている。 メルセデス・ベンツのディーター・ツェッチェ会長は、この独創的なデザインについて「自動車業界は成熟を迎え将来に不透明感を訴える人も多いが、これからの自動車は新たな進化を遂げ、静かなプライベート空間を提供する素晴らしい時代がやってくる。その進化を支えるのが、自動運転ができる自律走行車両(ドライバーレス・カー)の登場だ」と説明している。また、搭乗者の視線をモニターすることで何を操作しようとしているかを予測し、音声やジェスチャー操作の精度をあげる工夫も凝らしている。これにより、「煩わしさから解放された空間」を目指している。 ボディーには強化スティールとカーボンファイバー部材を組み合わせ、4割の軽量化を図っている。その一方、前後を分けるセンター・ピラーがなく、ドアが観音開きになっているため、乗り降りは格段に楽になっている。 そのほか、前後に設置した発行ダイオード(LED)ライトの色で車が歩行者を認識していることや、歩行者に横断歩道を投映して横断を促す機能もある。こうした歩行者や対向車とのやりとりは普段ドライバーが行っているが、ドライバーレス・カーでは車と人がコミュニケーションをして処理することが重要になっている。 とかく技術ばかりに注目してきた自動運転車開発。今回、メルセデス・ベンツが発表したコンセプト・カーは、そうした開発競争のあり方をもう一度見直す必要性を感じさせる。出典:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO81617840W5A100C1000000/?dg=1