2013/07/25(木)06:36
1920年代の「着付け」の本
私は服飾研究家ではまったくないのだが、
ちょっと思い立って1920年代に出された「着付け」の本に目を通して見ることにした。
面白いですねぇー。
ちょろっと、5分程調べただけでも、1920年代に出版された「着付け」の本と、
主に1970年代以降に出版された「着付け」の本では、同じ「着付け」でも、
まったくもって意味が変わってしまっていますねぇ。
今日、ちらちらみていたのは1924年に出版された古田むめさんという方が書いた「衣裳と着付」という本です。
日本女子美髪学校の校長先生でもあられた方ですね。
やはり、このタイトルからして「衣裳」と「着付け」がセット。
つまり、普段の着物のはなしではなく、プロの技術の話なんですよね。
23ページにはこう書いてあります。
「ふだん用の帯は誰にでも締められますが・・・」
そうそう、「普段」と「普段じゃない時」との差が歴然で、
普段のんはだれでもできて、普段じゃないときにプロが必要という、ごくごく当たり前のことが、当たり前のこととして話が進んでいきます。
他にも目にとまったのは、同じく1920年代の高等美容学院による講習録です。
着付けの話が最初から来るのかと思いきや、なんと一番最初にくるのは、
美顔の話なんですねぇ。
そこから、お化粧の話になって、髪結いの話(西洋髪・和髪を含む)となります。
その後、やっとこさ着付けなんですが、
「着付け」といったときに、和装だけが想定されているわけではないんですね。
洋装の「着付け」もそこに一緒に書かれています。
ここで想定されている着付けというのは、儀式ならびに夜会が前提とされていています。
ていうか1920年代に夜会に行く人達って・・・どんな人達・・・?
どう考えても、うちの親戚にはそんな人いなさそうです。
ただし、大事であっただろうな、と思うのは結婚式。
一世一代の大博打・・・いやいや、一世一代の大きな出来事ですよね、結婚式って。
もう、この日のために、世間の親御さんはどうやって金策をしたのか(あ、しまった、また貧乏臭い発想に・・・!!)、
親心なんでしょうねぇ。。。
庶民でもやっぱり、プロにお願いして、写真撮ってもらって・・・ってしてたんじゃないのかなぁ。髪の毛も綺麗にゆってもらって、一張羅着せてもらってねぇ。
しかし、驚いたのは1920年の段階でも手縫いの帯は「大層高価になります。今は廃れ気味でございます」
と書かれていること。
戦前はすべて手縫いだと思い込んでいた私には、ちょっとびっくりでした。
そうか、そうだよなぁ。ミシンはもう導入されてたんだよなぁ。。。
大正時代だもんん・・・。
それにしても、1920年代もやはり流行と伝統との間で、どうバランスをとるかというのは、
大きな命題であったようですね。
こんな柄が流行っていますが、的なくだりがとても多い。
ただし、このような本の質からして、やはり読者層は同業者の方々だったんじゃないかなぁと推測しています。
このプロの「着付け」が1970年代の本になると、まことしやかな顔で「着方」と摩り替わっています。
プロの知識が庶民に浸透・・・と書くと、大変「民主的」に聞こえるのですが、
ところがどっこい、おかしなことになったのは、その知識が見境無く「制度化」「商品化」されてしまったところにあるんじゃないかな、と思っています。
しかし、探せば色々面白いのがあるなぁ。ちょっとしばらくは1920年代の「着付け」というタイトルが入った本にハマりそうー!