日本航空の会社更生法申請にあたっては、企業年金の減額が大きな問題になった。一方、3月22日の『日本経済新聞』(朝刊)には、「三菱重工、年金減額へ」とある。ここのところ、企業年金が頼りないと感じるニュースが多い。
記事を見ると、三菱重工業の場合、企業年金の「給付利率を0.3%引き下げる」とある。これは、加入者が退職時まで積み立てた積立金を年金額として計算するときに適用する想定運用利回りを0.3%引き下げるということだ。これまで、三菱重工業では、10年物国債の金利(直近3年間の平均)に1.3%上乗せした利回りを使っていたが、上乗せ幅を0.3%引き下げるのだという。端的に言って、運用が難しくなっているから、利回りを下げるということだと理解していいだろう。
企業年金の多くは「確定給付型」と呼ばれる、一定の方式で決まった年金額を、積立金の運用利回りに関係なく支払うと約束する方式のものだ。この方式だと、企業年金基金、ひいては企業が運用のリスクに関して責任を持たなければならないが、近年の運用環境で、端的に言って、多くの企業が酷い目に逢ってきた。
これではたまらないと、運用リスクを加入者に持たせる「確定拠出型」に年金制度を切り替える企業も出てきたが、経営体力のある大企業を中心に、まだまだ確定給付型の企業年金が残っている。
だが、低金利に加えて、株式の運用が上手く行かなかった近年の運用環境に耐えかねて、確定給付年金の基金を解散したり、そこまでやらないまでも、企業年金の条件を下方改訂しようとする動きが出てきているというのが目下の情勢だ。
先の記事によると、三菱重工業は昨年3月末の時点で2591億円の積み立て不足があるという。同社の株式時価総額が約1兆2千億円だから、これは決して小さい額ではない。
企業年金の負担の大きさ、あるいはリスクの大きさの故に、年金給付を減らすという企業は、これからも続々と出てくるだろう。
現役世代は「年金額を守っても、業績が圧迫されて給料が減るのでは仕方がない」と思って年金額の下方改訂を諦めることもできるが、JALのケースのように、退職後にいったん決められたはずの年金額を後から引き下げるようなことが起こると、老後の生活設計に大きな影響を及ぼす可能性もある。
公的年金も、今後長期的に年金給付を引き下げていく方向で財政のバランスを取ることになっている。
月並みな話で恐縮だが、年金が、今後益々小さく、頼りにならないものになっていく傾向にあることは間違いない。自分でどのような備えを作るかが、これまで以上に重要な問題になってくる。
一方、投資家の立場で企業年金問題を考えると、先の三菱重工業の例でも分かるように、企業の投資価値に対して、企業年金の財政・運用状態やリスクが重大な影響を及ぼしていることに注意が必要だ。
企業年金の運用資産は、おおまかにいえば投資信託のように運用されている。つまり、確定給付型の企業年金のある会社の株式を買うということは、その企業の普通株と一緒に投資信託がセット販売されているものを買うような意味になっている。持ち合いの株式なども同様の意味があるが、これは、投資家にとっては、あまり都合のいい事態ではない。
企業の経営者側の事情からも、株主・投資家側の事情からも、確定給付の企業年金は縮小・廃止に向かう必然性がある。
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楽天証券経済研究所
客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第71号 2010年3月26日発行より) ==========================================================