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『 アリア 』 「 あなた ピエロなの? 」 アリアはポツンと言った。 目は窓の外の人の行きかう先の車道を見ている。 金曜の夜のフルーツパーラ 。 ぶしつけな人だと思いながら やっぱりこの人と2人のお茶は失敗だったと さよは思った。 少し待ってみんなと来ればよかった。 アリアは少し変わっていた。 人の心を見透かすようなことを時たま言ったり 次の日起こることを言い当てたりもした。 「 ピエロの意味が分からないは 」 さよは目の前のチョコレートパフェのクリームを 口に運びながら 向かいに座るアリアを見た。 アリアは 『 ふむ・・・ 』 と 目だけをさよに向けると なおも続けて言った。 「 あなた人がよすぎるのよ 悪い事じゃないと思うけど 時と場合よね 」 そう言うとアリアもパフェを食べ始めた。 フルーツパフェである。 さよとアリアは会社の同僚で 時たま会社傍のフルーツパーラーに 5人で集まってワイワイ会食をするのであるが 今日は書類やまもりで 他の3人は遅れてくるとのことだ。 アリアは入社して まだ一年もたっていない。 面倒見のいいさよが 隣の席に座ったアリアに声を掛けたのだ。 半分も食べないうちに3人は来た。 アリアが叫んだ。 「 おさきですぅ~~ www 」 「 K ! OK ! 」 話しは何時も会社内部のいわゆる悪口会話。 決してこの5人組から誰も抜けないのは 抜けた後のこのグループでの自分の噂話が怖いのと あとは このワイワイがストレス発散になっているのを 5人の誰もが感じていた。 さよは 壁に掛けられた風景画を見た。 この風景画が見える位置に さよは何時も座るのである。 綺麗な青い海。静かな波が押し寄せる砂浜に 広い翼の帽子を被った少女が座っている。 亜麻色の髪が風にそよぎ 春を感じさせるワンピースの白地に花柄のピンクが眩しく光る。 右側に砂浜 円を描くように何処までも遠くにつづいている。 その先に小さな緑の岩場が見える 言われてみると ここ数か月海を見ていない。 海・・・行きたいな。 すると その帽子の少女が振りかえってさよを見た。 さよは 思わず息をのんだ。 その少女はアリアである。 「 私が見えたでしょ w 」 目の前のアリアは笑いながらさよに言った。 さよは 両手で顔を覆うと目を上げて もう1度少女の絵を見た。 広い翼の帽子で顔は見えない 何時もの絵である。 さよは 息が止まりそうになった。 そう さよは 心の中でつぶやいたことがあった。 「 私ってバカみたい なんて人がいいんだろ 母も同じ事言ってた。 親子揃って ピエロだ。 」 あの時は 人生最大の絶望を感じていた。 そして この少女に話しかけたのだ。 涙 つきるまで話しかけた。 思えば一年前だったかもしれない。 その後 アリアが入社してきたのだ。 週明け アリアは会社にこなかった。 お別れ会の出来ないいきなりの退職。 おもえば アリアは何時もさよを 心掛けてくれていた。 さよは それに気づくすべもなかった。 アリアのいなくなった その机と椅子に 爽やかな 磯の香りがした。 またです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年05月24日 00時03分20秒
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