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2020年05月23日
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カテゴリ:カテゴリ未分類


















          『    アリア    』















    「 あなた ピエロなの? 」




      アリアはポツンと言った。
      目は窓の外の人の行きかう先の車道を見ている。
      金曜の夜のフルーツパーラ 。




      ぶしつけな人だと思いながら
      やっぱりこの人と2人のお茶は失敗だったと
      さよは思った。
      少し待ってみんなと来ればよかった。
      





      アリアは少し変わっていた。
      人の心を見透かすようなことを時たま言ったり
      次の日起こることを言い当てたりもした。








    「 ピエロの意味が分からないは 」






      さよは目の前のチョコレートパフェのクリームを
      口に運びながら 向かいに座るアリアを見た。
      アリアは 『 ふむ・・・ 』 と 目だけをさよに向けると
      なおも続けて言った。



   「  あなた人がよすぎるのよ 悪い事じゃないと思うけど
      時と場合よね 」




      そう言うとアリアもパフェを食べ始めた。
      フルーツパフェである。
      さよとアリアは会社の同僚で 時たま会社傍のフルーツパーラーに
      5人で集まってワイワイ会食をするのであるが
      今日は書類やまもりで 他の3人は遅れてくるとのことだ。

      アリアは入社して まだ一年もたっていない。
      面倒見のいいさよが 隣の席に座ったアリアに声を掛けたのだ。




      半分も食べないうちに3人は来た。
      アリアが叫んだ。



   「  おさきですぅ~~ www 」



   「   K ! OK ! 大笑い 」





              話しは何時も会社内部のいわゆる悪口会話。
     決してこの5人組から誰も抜けないのは
     抜けた後のこのグループでの自分の噂話が怖いのと
     あとは このワイワイがストレス発散になっているのを
     5人の誰もが感じていた。









     さよは 壁に掛けられた風景画を見た。
     この風景画が見える位置に さよは何時も座るのである。
     






     綺麗な青い海。静かな波が押し寄せる砂浜に
     広い翼の帽子を被った少女が座っている。
     亜麻色の髪が風にそよぎ 
     春を感じさせるワンピースの白地に花柄のピンクが眩しく光る。
     右側に砂浜 円を描くように何処までも遠くにつづいている。
     その先に小さな緑の岩場が見える






     言われてみると ここ数か月海を見ていない。
     海・・・行きたいな。
     





     
     すると その帽子の少女が振りかえってさよを見た。
     さよは 思わず息をのんだ。
     その少女はアリアである。

     






   「 私が見えたでしょ w 」
      




     

     目の前のアリアは笑いながらさよに言った。



     さよは 両手で顔を覆うと目を上げて もう1度少女の絵を見た。
     広い翼の帽子で顔は見えない 何時もの絵である。
     さよは 息が止まりそうになった。
     
   














     そう さよは
     心の中でつぶやいたことがあった。




   「 私ってバカみたい
     なんて人がいいんだろ
     母も同じ事言ってた。
     親子揃って ピエロだ。 」




     あの時は 人生最大の絶望を感じていた。
     そして この少女に話しかけたのだ。
     涙 つきるまで話しかけた。



     思えば一年前だったかもしれない。
     その後 アリアが入社してきたのだ。




















     週明け アリアは会社にこなかった。
     お別れ会の出来ないいきなりの退職。

     おもえば アリアは何時もさよを
     心掛けてくれていた。   
     さよは それに気づくすべもなかった。







     アリアのいなくなった
     その机と椅子に
     爽やかな 磯の香りがした。
     
















                         またです。





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最終更新日  2020年05月24日 00時03分20秒
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