身体・感覚とアート

2005/03/04(金)23:31

心・身体と上手くつきあう:仕事の裏側を見せる本

心と身体(20)

シビアな仕事裏を、仕事のおもしろさとともに書いてある本は意外に少ないです。 それを両方兼ね備えているのがこの本です。 晴山氏は独立前優秀な会社員でした。 晴山氏は独立、会社員問わず、社会人として必要なものを「独立のための五つの力(気力、財力、協力、体力、知力)」と定義しています。 仕事について生の事例が詰め込まれているので、独立にとらわれず、仕事を考える上で役立つ本です。 『独立して成功する!「超」仕事術 晴山陽一著 ちくま新書」 五章構成で、第四書までが著者の体験的「独立自営マニュアル」、五章が実践している「知的生産のための秘訣』になっています。 二十数年出版社にいた晴山氏が、筆一本でいかに独立したか、が書かれているので、若者の独立本ではない、一定の年齢を経た「大人の独立本」です。 晴山氏の自分との上手なコミュニケーション術は、本のあちらこちらに表れています。 『人は気分の中で生きている!  これが、独立五年で私が得た最大の悟りである。  人間を支配しているのは、高邁な思想でも何でもなく、実はその時その時の気分なのである。・・・・ふと気がつくと至って上機嫌だったとか、気がつくと無性に腹を立てていた、なんてことは日常茶飯事である。  まず正直に自分を見つめること、これがすべての仕事の基本だと思う。』 計画は予測できるものとできないものを分けて考え、予測できないものは「良い気分」を自分でつくりだすことが早道だと述べています。 自分に無理をかけないように、自分でもっていく、ということをはっきり意識している人であることがうかがえます。 『仕事というものは、ある意味、始まる時にはすでに終わっているのである。  執筆の下準備は、材料集めから始める。と同時に、何度も本の「構成」を練っていく。集めた材料で「構成案」を作り、それが不満なら、材料の補強をし、また「構成」を組み直す。こんなやりとりを通して、「ここまでそろえば本になるな!」という確信が持てたら、やおら書き出すのである』 実際に晴山氏はこの本の「構成案」を完成するまでに3つの構成案をつくっています。 2ヶ月周期で構想から6ヶ月。 ここでも「自分に無理をかけずに良い仕事をする」術を感じさせます。 このような仕事をするために、出版社と上手なコミュニケーションを行っているスマートさを感じさせます。 (私はどたばたと締めに追われることが多いので、これらのスマートさは非常に勉強になりました(笑)) そして、一見優雅に仕事をしているように感じられる晴山氏の根底に、非常に力強い意思を感じさせる文章が本の最後の方にあります。 『無駄に一日を終わらせたくない。その思いは非常に強い。できかけの企画は、是非とも今日のうちに形にしたい。書きかけた章は、何としても今晩中に脱稿したい。出版社への打診のメールは、明日ではなく今日の深夜に打っておこう。・・・・  これが「果報は仕組んで待て!」の精神である。こちらから働きかけなけらば、世の中は何も答えを出してくれない。しかし、働きかければ、必ず応えが返ってくる。必ず。』 人間であることは、日々ムラがあって当然、そしてそれと同時に「意思」の力を使い、行動をひとつひとつ起こしていく。 自分のすべての面を見つめながら、高度な仕事をこなしている大人の男性像が本を読んでいく中で浮かび上がってきます。

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