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~苔寺~

香りの追憶 ~苔寺・シプレ~

近所で撮影


最近そうでもないのですが、以前はやや辛口の
(あまり甘くない)香水を良く好んでつけていました。
そうなると、大体メンズ用が多かったのですが、
香水の本をよく見てみると、
ほとんどがシプレ・ノートであることが分かりました。

~シプレ・ノート~

フランソワ・コティーが、地中海に浮かぶ島「シプレ」(キプロス島の仏語)
で実際に感じた香りの印象を元にしてつくられた
「シプレー」(1917年)という香水が分類名の由来です。

シプレ・ノートはオークモス(樫の木の苔)などの
苔や樹木の香りをベースにし、そこに
フルーツ・花・ムスクなどで彩りを添えています。

全体的な特徴として、
「木の葉の湿ったような、くすぶったような香調」
「心を落ち着かせる、静かな格調のある香り」
という言葉が上げられるそうです。

今で言う、~癒し~リラックス~落ち着き~などの
印象を私個人としては持っています。

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幼い時、よく母に連れられて遠くのお寺に行っては
お線香をあげていたり、お墓の掃除をしたりしていました。
小さかった私は「何でいつもこんな所に来なきゃならないのだ。」
と母を恨めしく思うと同時に、思春期になっては
もう母についていくことさえもしなくなりました。
しかし、故郷を離れて数ヶ月後、不意にそのお寺にとても
行きたくなったのです。何故だか・・・引き寄せられる様に。

そのお寺は、手入れが行き届いており
地面にはびっしりと瑞々しい苔が生えていたのが印象的でした。
その空気感といったら・・・、清々しく、透明。
心の中の不浄を許してくれるような、存在感。
もうその場所からしばらく離れる事が出来なかったくらいです。

苔の中にぽつんとある石の椅子に腰掛け(苔を踏まない様に)
ぼんやりと眺めていました。
眼の先には、また素晴らしい藤棚がありましたが、
その甘い蜜の香りが邪魔に思えるくらい、湿り気のある
苔と空気の香りに心奪われていたのです・・・。

そう、私の記憶の中にある好きな香り・ルーツのひとつは
この「苔の香り」なのかも知れません。

そして何となく、湿った印象・大地の息吹、そして心の落ち着き
を感じてしまうシプレ・ノートの香りに心惹かれるのは
偶然ではなく、必然と感じてしまうのです・・・。

後日、そのお寺(私は勝手に苔寺と呼んでいます)を管理していた
先代の住職さんが亡くなってしまい、私はあの綺麗な
苔が無くなってしまうのではないかとがっかりしていましたが、
息子さんが後を継いで苔の管理をしている、と母から聞いて
一安心したところです。



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