白いマント白いマント「大寒、小寒、山から小僧がとんできた」 おばあさんが、いろりの火にあたりながらいいました。 「小僧って、どんな小僧がとんでくるの?」 きよしちゃんが、聞きました。 「それはなあ、まっ白い雪のようなマントを着た、子どもだよ。その子どもが、向 こうの山から駆けてくると、雪が降るぞな」 けれど、おばあさんもまだ、その小僧を見たことがないといいました。 きよしちゃんは、一度その小僧を見たいものだと思いました。 きよしちゃんは、外へ出て、向こうの山をながめました。 山の上の空はくもって、今にも雪が振り出しそうに見えました。 そのあしたは、寒い風が、ぴゅうぴゅうと吹きました。 きよしちゃんは、黒いマントを着て、学校へ行きました。 学校へ来てみると、廊下の壁のところに、たくさんのマントが並んでつりさがって いました。 きよしちゃんは、白いマントを着た小僧のことを思い出しました。 たくさん並んでいるマントの中に、もしかしたら、白いマントがあるかもしれませ ん。 白いマントがあれば、それは、山から飛んできた小僧のものに違いないのです。 きよしちゃんは、胸をどきどきさせて、ずっと廊下の端から端をまで、マントを見 て歩きました。黒いマントの間に、女の子の赤いマントも並んでいました。 でも、白いマントは、とうとう見つかりませんでした。 「小僧が飛んでくるなんて、きっとうそなんだ」と、きよしちゃんは、思いまし た。 その晩、風がやんで、外は静かになりました。 夜中に、きよしちゃんのうちの縁側の戸を、だれか、とんとんたたきました。 とうとう、白いマントを着た小僧が、やってきたのです。 そけは、小さい小さい豆粒のような、雪の子どもでした。 とんとん とんとん 雪の子どもは、一生懸命戸をたたきましたが、きよしちゃんもおばあさんも、ぐ っすり眠っていて、返事をしませんでした。 |