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2015年02月09日
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たったひとりの聖戦(1)
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たったひとりの聖戦(9)

オサマ・ビンラディン アフガンの荒野から孤独の荒野へ


ロバート・フィスク著      
安濃一樹訳

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<タリバンは国を再建するために帰国したのではない。祖国の思い出はすでに失われていた。タリバンは自分たちが育った難民キャンプをアフガニスタン全土に再建しようとした。だから教育は否定された。テレビもない。女たちは家を出られない。ペシャワールのテントで、母や姉妹がそうだったように>

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▽ たったひとりの聖戦(9)

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 一九九七年三月、二度目の会見から九カ月も経たないうちに様変わりして、より邪悪な姿となったアフガニスタンに私は帰ってきた。ビンラディンでさえ思いもしなかったような、無知で傲慢な信仰心による支配が始まっていた。
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 腐敗したアフガン人ムジャヒディーンたちは一五の勢力に分裂したが、タリバンがその一二までを打ち破り、北東の極地を除くほぼ全土を制圧していた。そして支配下のアフガン人にタリバンの正当性を強引に認めさせようとした。ワッハーブ派の教義を純粋に守るため、タリバンによるシャリア法の解釈は厳格を極めた。それはキリスト教の司祭たちが最も過酷な統治を行った時代を彷彿とさせる。首を刎ね手を切り落とす刑罰や、女性を蔑視する傾向を見れば、あらゆる快楽に対して敵意を抱いていることもよく理解できるだろう。以前、ジャララバードのホテルは古いテレビを自慢げに置いていたが、打ち壊されることを恐れて庭園の納屋に隠してしまった。テレビやビデオテープは盗人と同じように木から吊される定めとなった。
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 「こうなることは分かっていた」。ジャララバードの宮殿が見える場所で庭師が私に話してくれた。かつて王室が冬を過ごしたパレスは廃墟となっている。「タリバンは難民キャンプからやってきた。自分たちが持っていた物だけを私たちに与えようとする」
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 庭師の言葉を聞いて、ようやくタリバンの姿が見えてきた。タリバンが布告した新しい法は、私たちにとってもアフガニスタンの知識人にとっても、あまりに残虐で時代錯誤に過ぎる。タリバンは宗教を復興しようとして、この法を宣布したのだろうか。それでは説明しきれない。むしろこの法は、一六年前にソ連に追われ、国境の広大なキャンプで土埃にまみれ、苦しい生活を強いられた何百万ものアフガン人の記憶を、そのままに伝えようとするものではなかったか。
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 タリバンの兵士たちは、パキスタンの病気が蔓延するキャンプで育った。少年期の一六年間を目を覆いたくなるような貧困の中で過ごしていた。教育も受けられず、なんの娯楽も与えられなかった。母親や姉妹は蔑まれ、男たちに従うことしか許されない。その男たちは、国境線の向こう側で、異国から来た敵を倒す作戦を練っていた。コーランを詠むときだけ、現実から逃れることができた。取り憑かれたようにコーランを詠みふけった。「この世でただ一つの真実の道。この道の他に道はない」
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 タリバンは国を再建するために帰国したのではない。祖国の思い出はすでに失われていた。タリバンは自分たちが育った難民キャンプをアフガニスタン全土に再建しようとした。だから教育は否定された。テレビもない。女たちは家を出られない。ペシャワールのテントで、母や姉妹がそうだったように。
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 だれかアフガニスタンの心配をしていたろうか? ちょうどあのころ、トルクメニスタンからアフガニスタンを経由しパキスタンに至る天然ガスのパイプラインを建設する計画があった。米ユノカル社は、その権利を得るためにタリバンと交渉を続けていた。一九九六年九月、米国務省はタリバンと外交関係を結ぶことを発表したが、後になって取り消している。ユノカル社の職員のなかにザルメイ・ハリルザードがいた。五年後に、彼はジョージ・ブッシュ大統領の特使として「解放された」アフガニスタンへ赴任し[今ではアメリカ大使としてイラクに駐在し]ている。ユノカル社は、パシュトゥン族の指導者も雇っていた。ハミド・カルザイ[現アフガニスタン大統領]である。
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 アフガン人がアメリカ合衆国を疑うようになったのも無理はない。ロシアとの戦いが続いていたとき、アメリカの同盟国はみんなビンラディンを支援していた。戦いが終わると、アメリカはビンラディンを国家最大の敵に指名した。ペンタゴンという運命の女神は気まぐれだから、国家最大の敵という称号はいったん授けられても保持することが難しい。ワシントンは新しい怪物たちを次々と発見する。古い怪物を捕まえ切れないとなると、それだけ新しい怪物が増えてくる。
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 今のところ、ビンラディンとタリバンは親密にしているようだ。だが、いつまで続くか。ビンラディンはアラブ人として、タリバンよりも遥かに大きな野望を抱いている。アフガン人を制圧することしか考えていないタリバンに囲まれて、ビンラディンは名誉ある亡命者としての品位を失わないだろうか。タリバンは、窮乏するイスラム共和国スーダンほど勇敢にビンラディンを守るだろうか。
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岩波『世界』誌、〇五年一二月号掲載。
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Extracted from The Great War for Civilisation: the Conquest of the Middle East by Robert Fisk.
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ロバート・フィスク。英『インディペンデント』紙中東特派員。ベイルート在住。北アイルランド紛争、イスラエルのレバノン侵攻、イラン革命、イラン・イラク戦争、ソ連のアフガン侵攻、湾岸戦争、ボスニア戦争、アルジェリア内戦、NATO軍のユーゴ空爆、イラク戦争などを取材。著書にPity the Nation: Lebanon at War (1990.1992)など。最新刊にThe Great War for Civilization: The Conquest of the Middle East がある。
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写真はパキスタン、ペシャーワルのアフガン人難民キャンプ。







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最終更新日  2015年02月22日 20時55分56秒
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