奇跡の人奇跡の人バックパッカーに住み込んでいて、本当にいろいろな人に会った。 その中で、とても印象に残っている人がいる。 オーストリア人でドイツに住んでいるマンフレッド。 彼は分厚いメガネをかけていて、いつも笑顔でよくしゃべる人だった。 彼はエイベル・タズマンにトレッキングに行って、迷子になった。 エイベル・タズマンを歩くのは、とてもラク。 案内もしっかり出ている。それを見落とすのは、相当な不注意と思われる。 帰りのバスに乗り遅れ、彼はヒッチハイクでネルソンまで戻ってきた。 その夜は迷子になった彼が戻ってくるまで、宿のみんながそわそわした。 不注意と言ったが、彼の視力はそれを見落とすほど悪かったのだ。 メガネをかけていても。 一度ネルソンを旅立った彼が3週間後くらいに、また宿に戻ってきた。 旅の途中でメガネがこわれてしまい、メガネがないと、とても不自由。 彼のメガネは特殊で、それを作るために、 ある程度の街であるネルソンに戻ってきたわけだ。 翌朝、ボスがマンフレッドを眼科まで送って戻ってきて、言った。 「マンフレッドがなんであんなに眼が悪いか、知っているか?」 ボスは続けた。 「彼は小さな頃から糖尿病で、そのせいで視力も悪いんだ。 そして、少し前腎臓の移植手術を受けたんだ。 それはそれは難しい手術だったそうで、 医者から彼が術後に目を開けることは『奇跡』とまで言われた。 手術が成功して、今こうやって旅をしていることは 世界で2,3人に一人の『奇跡の人』だって。 彼は毎朝目が覚めると、手を動かし、それを見て 『今日も生きていた。』って思う。 そして彼は『Every moment is important.』 と一時一時を大切に生きて、息をしているんだ…。」 私はこれを聞いて、鳥肌がたった。 健康でいるのが当たり前で、周りと比較したりして、 不平不満を言っている自分が情けなくなった。 これはNZ滞在最後の日に聞いた話。 心の奥に響いた。ずーとずーと忘れない。いや忘れちゃいけない。 Every moment is important. あれから日本に帰り、マンフレッドもドイツに帰った。 彼はドイツから、そして故郷のオーストリアから絵葉書をくれた。 そして「この夏ヨーロッパに行くよ。」と伝えると、 それはそれは喜んでくれて、 「この辺りには歩くのにいい森があるから、歩こう!」 と言ってくれた。 その後、具体的な日程が決まりだしたので、彼にメールをすると、 あんなに喜んでくれていた彼からの返事がなかった。 結局会えなかった。 あれから、もう3年近く、彼の消息は未だにわからない。 ただただ生きていてほしい。そう願う。 「旅~ヨーロッパ~」へ ジャンル別一覧
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