『アイムソーリー、ママ』 桐野夏生
『アイムソーリー、ママ』著:桐野夏生児童福祉施設の保育士であった美佐江と、その生徒であった稔。親子ほど年の離れた夫婦は、ある日偶然、同じ学園の生徒であった、松島アイ子と再会する。その夜、美佐江と稔は炎に包まれて死亡。殺したのは、アイ子。彼女にとってその殺人は、初めてでもなければ、終わりでもなかった。なんともいたたまれない物語。愛されずに育ったものは、人を愛することができない。というのは、本当なのだろうか。。。と思うほどの、憎しみの連鎖。また彼女の回りも、どいつもこいつも腹黒い、揃いも揃って悪いヤツばかりなのだけど、そういうのを引き寄せてしまうのか…。憎しみと怒りのスパイラルを描きながら、底へ底へと堕ちていく、まさに蟻地獄。邪魔だから殺す。殺して逃げて、殺して逃げて。そうするうちに、自分のルーツを知る人間まで、消してしまったことに気づく、短絡的なアイ子。アイ子が本当に求めていたのは、何だったのか。母親か、安住の地か、金か、人並みの生活か。ドロドロした中にも、生命力とバイタリティの溢れた、不思議な作品。誰も彼もが、救いようもないぐらい悲惨なのだけど、メインであるアイ子の、あまりに浅はかというか、短絡的というか、本能のおもくままな行動のためか、彼女たちに同情したり、憤慨するというよりも、一種のエンターテイメント、それも決して味わえない、味わいたくない世界を覗き見しているかのような、一冊でした。ランキングもよろしくお願いします♪【参考】 I'm sorry, mama←試し読みもできます。◆桐野夏生の著書は→ 読書感想★そのほか話題の記事はコチラ→