『まぼろし』 夢か現か幻か
『まぼろし』マリー(シャーロット・ランプリング)とジャンは、連れ添って25年になる幸せな夫婦。今年も、いつもの夏と同じように、フランス南西部のランドにヴァカンスに出かけた。ヴァカンスの2日目、マリーが浜辺で午睡している間に、海に入った夫は、手がかり一つ残さずに消えてしまう。事故なのか、失踪なのか、それとも自殺…?かけがえのない愛する人を、突然失った時…。夫がいなくなったという現実を受け入れたくないマリー。常に微笑を浮かべてはいるものの、それはどこか悲しげで。本気で夫はいると思い込んでいるのか、それとも、いないと分かった上で、いるように振舞っているのか。傍目には狂気に見えるけれども、実は、冷静なのかもしれない。その辺りの複雑な想いを静かに表情で語る、シャーロット・ランプリング。この時、シャーロットは55歳ぐらいらしいけれど、スタイルのよさには感嘆。水着姿でも、さすがに20代のハリはないけれど、十分魅力的な身体のラインと、老け感を全く感じさせない、ファッション。そしてさすがはフランス映画。50代後半でも、恋もまだまだ現役。旦那が失踪して1年しか経ってないのに、他の男とどうかなるなんて、もしこれが日本だったら、どんだけ非難されるか分からないのに、夫を失った穴を埋めるのは他の男とばかりに、マリーの友達もしきりに男を薦める。親友のその親切心は嬉しいけれど、自分には夫がいるんだと、一笑に付すマリー。夫の目はブルーだから似合うだろうと青いネクタイを買い、夫の預金は使えないと言われると、夫に伝えるわと、アンバランスさギリギリ。しかしどこかで、夫の死を認めようとしている自分もいて。もしかして夫は自分の意思で、自分の元から離れたのかも、と思い悩む。そして夫の母親からも、それを指摘される。死んでから明らかになる夫の苦悩。それに気づいてやれなかった妻の苦悩。序盤の、言葉少なで通じ合う25年も連れ添った夫婦の姿は、妻が見ていた幻想だったのかもしれない。溺死体を見ても、時計は彼のものじゃないとそれを認めない。その後、夫がいなくなった海で号泣するマリー。夫の死を認めたのかと思った矢先、遠くの砂浜にたたずむ夫に似た影に向かって、走り出す。愛する人を突然亡くす、いて当たり前だった人が、突然いなくなる。その深い悲しみと混乱を静かに魅せた、映画でした。ランキングもよろしくお願いします♪【参考】 まぼろし 公式HP映画レビュー★そのほか話題の記事はコチラ→