『夜の公園』 著:川上弘美
「わたしいま、しあわせなのかな」
などと自問できるのは、今幸せだからだ、
ということに、気づかないのか気づいているのか。
申し分のない夫に守られ、ふわりとしたワンピースに、
淡い色のカーディガン、そんな装いの似合う主人公に、
ちょっとイライラしながら、9つも年下の恋人に、
「いとけない人」なんて言われることに、
ちょっと嫉妬しながら(笑)読んだ一冊。
不倫に浮気に離婚に心中未遂に、
ドロドロとした話なのに、どこかおとぎ話のような、
不思議な小説。
夜の公園の街灯に集まる蜻蛉のような、
ふわふわと、とらえどころのない、
あまりに実態のない登場人物たちのせいか。
仲が良いのか良くないのか分からない親友、
愛しているのかいないのか分からない夫婦、
好きなのか好きじゃないのか分からない恋人たち。
主人公のリリにも、親友で夫の不倫相手である、
春名にも、私はどちらにも近くなくて、
感情移入することはできなかったけれど。
でも、一人でいるのはイヤだ、誰かといたい。
けれども、今一緒にいたい人が誰なのか分からない。
誰ならば、この寂しさともつかない、悲しさともつかない、
心の隙間を埋めてくれるのだろう、
誰と一緒にいればいいのだろう、
誰と今、一緒にいたいのだろう…と思い悩む気持ちは、
なんとなく分かる気がする。
そこで私は、誰ともいるくらいなら、一人でいよう、
と思うタイプなのだけれども(笑)。
好きな人と一緒にいて、愛されているはずなのに、
幸せなのか分からないという贅沢。
依存しているようで、いつの間にか、
ふと飛び立っているような。
やはり、蜻蛉のような儚い印象の、一冊でした。
ランキングも
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【参考】
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