2008/08/31(日)21:48
『邪魔』 奥田英朗
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『邪魔(上)(下)』
著:奥田英朗
及川恭子、34歳。
サラリーマンの夫、子供2人と東京郊外の建売り住宅に住む。
スーパーのパート歴1年。
平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に、
足元から揺らぎ始める。
九野薫、36歳。
本庁勤務を経て、現在警部補として、所轄勤務。
7年前に最愛の妻を事故で亡くして以来、
義母を心の支えとしている。
不眠。
同僚・花村の素行調査を担当し、逆恨みされる。
放火事件では、経理課長・及川に疑念を抱く。
『最悪』を読んだ時も、「うわぁ最悪~…」って思ったけれど、
これも負けず劣らず、最悪でした。
「日常」が、少しずつ少しずつ崩壊していく恐ろしさ。
ごくごく普通の家庭が壊れていくさまが、リアルでとても怖い。
子供と家を守ろうと必死になるあまり、我を失ってしまった恭子。
なんでそこまで?って思うけれど、追い詰められてしまったら、
誰でもそうなってしまうのかもしれない。
私はそうならない、とは言い切れない怖さが、にじみ出る。
それ以前に、職場でのパートの権利を主張するグループに、
いつの間にか巻き込まれてしまい、今までにない充実感と、
連帯感を得るものの、正しいと思ったことがいつでも、
正しいと認められるわけではないと知ってしまう過程と、
利用されていたのかという虚脱感も、あり得そうで恐ろしい。
平凡な主婦だったのに、一度そういう体験をしてしまった故に、
そこまでしてしまうほど、吹っ切れてしまったのか。
そんな恭子に亡き妻の姿を重ね、その狂気を押しとどめようとする、
九野。
しかしその九野もある意味、狂気に取り付かれていて。
九野の義母が○○だった時は思わず、「えっ!?」と、
声を上げてしまったけれど。
そこからソッチ方向に行ってしまったらどうしようかと思ったけれど、
行かなくてよかった(笑)。
多分、どこにでも誰にでも起こるようなささやかなことが、
一歩、いや半歩足を踏み外してしまうだけで、小さなズレを生み、
そしてそのズレが少しずつ少しずつ広がって、気づいた時には、
這い上がれないほど深い亀裂に落ち込んでいる。
どこで間違ったのだろう?と自問しても後の祭り。
九野と裕輔には日常が戻ったのだろうけれど、
恭子はどうなるんだろう…。
同年代の恭子の行く末が、とても気になるのだけれど。
そして2人の子供たちも。
あまりの救いようのなさに、『空中ブランコ』、『イン・ザ・プール』といった、
軽くて面白おかしい小説が読みたい!と猛烈に思った、一冊でした。
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