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書/描



「書くことと描くこと」 瀧口修造

http://archive.tamabi.ac.jp/bunko/takiguchi/e-taki0.htm

「書くことと描くこと、この二つのものの根源について考えることがよくある。人間の自己表現をすくなくとも個体発生的にみると、その境界が非常に漠然としている。 もちろん書くことと描くことが人間の技術として独立してしまっている以上、幼年の ごく短期間にこの二つの技術を習得してしまうのだが、その根源にはやはり二つのも のの未分の時期ないしは状態があるように思われる。
・・・ぼくは時おり、書くことと描くことが何らかの形で一つになった表現手段と いったものの誘惑に駆られることがある・・・」 瀧口修造 「書くことと描くこと」 より

美術批評から造形芸術に及ぶ瀧口修造の仕事は多岐にわたりますが、そこには詩と絵画、あるいは文字と造形の成立への根本的な問いかけという一貫した問題設定を読みとることができます。その点、詩画集というジャンルは「書くこと」と「描くこと」の問題がコラボレーションという形で示された重要なメディアといえるでしょう。 今回の展示では、瀧口の最初の詩画集で、今回新たに文庫に加わった『妖精の距離』と、最晩年の詩画集である『物質のまなざし』の、2つの作品に焦点をあてて、瀧口修造の仕事を紹介します。また、瀧口が生前深い関心を寄せた、シュルレアリストや日本の作家たちの詩画集などの展示もあわせて行います。

『物質のまなざし』
詩・アントニ・タピエス 画・瀧口修造
1975年 ポリグラファ社(バルセロナ)
44×31?
98ページ(箱入り)
Material Glance
1966年 20ページ Galerie de France: Paris 22x25cm

 この本に使用されているカタロニア産手漉包装紙は、瀧口修造の示唆によりアントニ・タピエスがスペインで探したもの。物質感の強いこの手漉包装紙に、タピエスのリトグラフ、しの竹を削って作った筆で書かれた瀧口の自筆テクストが刷り込まれている。瀧口が自筆のテクストを刷り込むということはあまり例がないが、手書きの感覚を残すことでメ書くことモとメ描くことモの境界を曖昧にしようとしたのだろうか。タピエスのオリジナル版画は別刷りとして、さらに大きな寸法のアルシュ紙、リーヴ紙、グアロ紙にも刷られた。発行当時、瀧口72歳、タピエス52歳。
 1958年、瀧口はヴェニス・ヴィエンナーレの日本代表及び審査員として渡欧し、欧州各国を巡った際、スペインでタピエス宅に滞在した。後に瀧口は、タピエスを「意外なミロの後継者を見いだした」(『みずゑ』1961年9月)と評する。この詩画集の発行元であるポリグラファ社は、瀧口とミロの最初の詩画集『手づくり諺』を手がけた出版社であり、社長のジュワン・ド・ムガは、カタロニヤ地方における前衛芸術家のパトロンとして代々有名な一族の代表者であった。

 たとえば、文字をかく、絵をかくという、いまはよそよそしく分離してしまい、しかつめらしいもの織りのとりこになっている人間の行為がある。
 この地上の国境のように、そらぞらしいものになってしまったもの。距離の感覚も、人を惑わす。
 沈黙すら量ることを知らぬ火星よ、きみもこの尺度のとりこにならぬよういのる。

瀧口修造 「アントニ タピエスと/に」 『タピエス展図録』



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