フォアグラと絵
個展の展示方法について、語る。夜。 ほんとうに最初の、2003年にした個展の作品から今に至るまで…布に刷った大きな作品達を順々に見てもらった。 最初の個展から、東京に来てすぐに描いた龍田川まで…この1~2年に いったい何があった?…という程、線が劇的に変わっていると指摘されて少し照れながら、私を変えた人のことを話した。 5年、結婚の約束をした彼をふり切って望まれているかも定かでない、惹かれてどうしようもない人の側へ。自分の想いの強さに怯えながらあなたはいらないと言われる恐ろしさに震えながら。 落椿と龍田川は、その頃の、本当にギリギリ崖っぷちにある感じが絵にもの凄く出ていると。 …それに対して、今わたしが個展に向けて描いている絵はどこかしらの幸福感のようなもの…何か遠い場所を思い出しているような感じがすると。。 言い当てられたようで、びっくりした。彼の言うその通りの 霞みがかった…追憶のような気持ちで、絵を描いているのかもしれない。 あの、眼前に迫ったギリギリに息が詰まりそうな絵を 今の私が描けないように、今のこの 遠くを大切に大切に、憶うような作品は 当時の私では描けない。 その忘れがたい過去からきっぱりと断絶していないから、遠くを思い出すかのようにして描いているんだろう。ずるずると口から出た肝臓に気付かないまま脂肪肝になったそれを引きずり歩いて、もう肥大してどうしようもなくなったそれを元の腹には戻しようがないから…外から大切に大切に、これからの経過を観察していく… フォアグラとして食べてしまおうか。それじゃあ一瞬だから、もったいないよね。 もっと、どんどん肥大させて…飼っているかのように愛でるのがいいね。