マーケティング感覚あるのかな?
先日の新聞に、都内のホテル、特に外国人ビジネスマンらを主なターゲットとする高級ホテルが苦戦をしているという記事が載っていました。それでも、なんとか震災後の最悪の状態からは脱しつつあるようです。そりゃあ経営は大変でしょう。そもそも震災前であっても、リーマンショックの金融危機以来、都心高級ホテルは閑散としているという話が多かったです。特に、超高級外資系ホテルの稼働率はかなり低かったとも聞きました。1泊「素泊まり」(ホテルですから当り前ですが)5万円だ8万円だなどという一般的な日本人生活者からすればとんでもないような値段で商売してきたのですから。もちろん、彼らは一般的な日本人生活者など相手にはしていないのは重々承知していますけど。超高級外資が進出してきてから、日系の高級ホテルは苦戦しているようです。外国人エグゼクティブは、超高級外資に奪われ、ちょっとした日本人リッチ層は、おそらく経費節減などで泊まるホテルも選別している可能性があります。最近は、新しくても高級(日系)御三家(なんていまだに言う人はいないでしょうけど)ホテルよりもずっとリーズナブルな価格のホテルも増えているようです。そうなると、サンドイッチ状態になった御三家は大変なのでしょう。プレステージ追求かコスト対応か。もちろん、そんな簡単なものではないでしょうが、こうしたサンドイッチ状態になった企業が苦しくなるのは、どこの世界でも一緒です。例えば、新興国などで「価格の割に品質が良く、ブランドとしても悪くない」日本車はかなりの人気になりました。クルマ好きの間での「人気」という点では、欧州メーカーに劣るかもしれませんが、価格的な魅力が高いので、売れるのは日本車の方が多いというケースがほとんどでした。ですが最近では「品質がいい割には、価格が安い」というポジションは韓国のヒュンダイに奪われ、多くの市場で日本車のシェアを奪われています。他方、ブランド力ではドイツ系にかなわないので、高価格化もなかなかできない状態になっています。結果として、中国などの新興国市場、アメリカというオープンな巨大市場で好調なのはヒュンダイとドイツ系という構図になってしまっています。日系御三家ホテルは、そもそも部屋数も多いので、プレミアム感維持とマス顧客の獲得の両立は大変だろうなと、新聞記事を読んで思っていました。とそんな時、今朝のチラシを見て、ちょっと驚きました。新聞広告ではなく、ただの織り込みチラシです。しかも大きさはA4判1枚という、はっきり言ってしょぼいチラシです。金曜日のようにたくさんのチラシがある日だったら、見落とすところでした。そのチラシにはこう書いてありました。「品数を少し抑え目にしたお手頃な一万二千円のコースをご用意しました」と。「なんだこれ?」と思いました。時々ですが、居酒屋のチラシは入ってくることはあります。「299円均一」とか「1500円で2時間半飲み放題とか」そういう大衆相手に価格訴求するならチラシの意味はわかりますが、庶民の気持ちを逆なでするようなチラシって、どうなんでしょうか?要するに、「当店はもっと高いコースしかないけど、最近はじり貧なので貧乏人でも来れるように、安いコースを設定しましたから、来てね」ってことなんでしょう。そりゃあ私だって、仕事などでお呼ばれして、いわゆる高級という和食のお店に行ったことはあります。もちろん、やたら高いです。それに比べればこの値段が安いのは事実です。だからと言って、一万二千円のコースを「お手頃」って書くのでしょうか?しかもです。「いつものウン万円のコースがこの期間、このお値段で!」というならわかります。ですが、わざわざ量を減らしたと書いてあります。高級和食の世界は不思議な世界で、高い店ほど量が少ないのです。近所の定食屋なら、さんま定食で味噌汁をトン汁に変えて、更に納豆を追加しても千円で収まります。別に学生街での話ではありません。この高級和食屋の近くの店です。もちろん満腹になります。ですが、私が経験した超高級和食屋さんは、ウン万円もするコースなのに「え?もうコース終わったの?」と聞きたくなるほど、少量の場合が多いです。(例外は、温泉旅館。あれはすごい!)最近は、それで満足するようにしていますが、若いころは帰りにラーメン屋にかけ込んだものです。「一体、どういうつもりなんだ、この店は?」とチラシを良く見ると、御三家の一つのホテルにある和食屋さんのチラシです。で、裏面を見ると、もっと驚くことが・・・なんでもワインと料理コース(こちらは洋食のようです)のセットの値段が書いてあります。書くのがはばかれるほどの値段です。「お一人様五万円で、1組2名様より」です。しかも2名様と言いながら、ワインはハーフボトルとケチってるのです。つまり、「十万円持って来いと、そしたらうまいもん食わしてやるぞ、でもワインはハーフだけね」という厚顔なチラシなのです。ちなみに、これも庶民用なのでしょうか、ワインをちょっと変えて、お一人様三万五千円のコースもあります。よく読むと、これとは別にグラスワイン一杯もあるみたいですが。しかもこれだけのお金を払っても、まだ「サービス料、テーブルチャージは別途頂戴しております」だって!私は別にこのレストランの価格体系に文句を言ってるのではありません。もっと高いレストランだってあるでしょう。ですけど、これは新聞の折り込みチラシですよ。スーパーの特売や不動産関係がたくさんある、チラシ。しかも高級感なんて全然ないA4のチラシです。ああ、やはり日系ホテル御三家全体の問題なのか、このホテル固有の問題なのかわかりませんが、マーケティングセンスがある人がいないのは確かでしょう。ターゲットは一体誰なんでしょうかね?企業向け?「部長、今度のX社の接待の件ですが、今朝のチラシにいいのが出てましたよ。品数は少ないものの、あの一流ホテルでたったの一万二千円のコースです。コスト削減がうるさい今のご時世にはピッタリではないでしょうか?」デート向け?「今度の彼女とのデート、どこにしようかな?おっ?今朝のチラシにお得なのが出てるぞ!あの有名なワイン付きで、たったの五万円!つまり二人で十万円ってこと?これは安いなー、即予約しよう!!」近所の住民向け?「・・・」(思いつかない)どれも考えられないシナリオです。しかも、この五万円のコースは、明後日とし明後日の二日間だけなんです。だれがどういう理由で、こんなコースをチラシ見ながら一日か二日で意思決定するんでしょうかね?モンゴル人の皆さんへ:この価格が日本の料理の標準というわけでは決してありませんので、ご安心ください。日本には安くておいしいモノがたくさんあります。