2018/01/01(月)14:27
伊藤英明の大シベリアを見て。
年末、BSで「シベリアを行く」というような番組を二日続けてやっていました。私は途中から見ただけですが、バイカル湖などが映し出されました。
番組としては、「日本人のルーツ?を探す」みたいな感じでしたが、モンゴル的視点で見ても大変良い番組でした。ちなみに、今回のは2015年に放送された番組の再放送でした。
モンゴル的視点で言えるのは、今回登場する地域は全てロシア国内ですが、その行先の多くがモンゴル語語源の地名だったということです。
バイカル湖、ナリン・ヤグラ、トゥバ、ブリヤード、サハ、ヤクーツク、ウランウデなどは全てモンゴル語であり、これら広い地域が元々はモンゴルの領土であったことを示しています。
13世紀の旧モンゴル帝国の復活はもちろん無理としても、モンゴル人が大半を占める地域が近代においてロシアと中国に奪われてしまったことがよくわかります。
ちなみに、「シベリア」という地域名や北方森林地帯を指す「タイガ」という言葉も、当然ながらモンゴル語です。もっと言えば、モスクワだってモンゴル語語源です。
中国のモンゴル自治区は有名ですが、ロシア側のトゥバやブリヤードは外国人には馴染みがないので、そうした戦後のソ連による植民地化を知らない人が多いのは残念です。
中国におけるモンゴル自治区は文化大革命時に中国人によるモンゴル人の大量虐殺が行われたことは、日本では有名とまではいかないにしろ、何らかの形で日本には伝えられています。
が、ソ連邦におけるトゥバやブリヤードでの「粛清」はほとんど報じられていないと思います。モンゴルでも粛清はありましたが、とにかくロシア人にとっては「タタール人」すなわちモンゴル人が憎くてたまらないのです。
モンゴル国内でも多くの悲劇がありましたが、トゥバやブリヤードはソ連邦、ロシア連邦内の国ですから、どれだけひどい目にあったかは想像に難くありません。
もちろん、この番組ではそんな政治的なことは一切取り上げられていませんでした。中国とソ連を見てわかるのは理由はどうでもよく、要するに社会主義国家というのは「気に入らない民族」は国家として平気で殺してもかまわないという考え方でしょう。
で、今回のテレビです。
意外なほどに「モンゴル的生活」を続けている人が多かったということです。番組としてはモンゴルとの近似性は一切触れていませんでしたが、見る人が見ればわかります。
トゥバ共和国で、旅人の伊藤英明が草原で音楽を聴くというシーンがありました。草原は、モンゴル北部、例えばフブスグルやセレンゲの延長上の草原のように見えました。
そこで奏でる楽器にはなんと馬の細工が。そうです、馬頭琴でした。衣装はもちろんデールです。しかも歌い方はホーミーでした。小さな違いはともかく、普通にみればまんまモンゴル人です。
ホーミーをその地域の人は「フーメイ」と呼んでいました。ま、この程度であれば十分方言の範囲内です。
テレビで見るとトルクメスタンとか西の草原国家の移動式住居はモンゴルのゲルと見た目が若干違う場合があるのですが、トゥバのゲルはモンゴルのそれと全く同じで、名前もゲルでした。
私から見ると、今は中国政府によって生活スタイルを無理やり変えられてしまった内モンゴルより、もっとモンゴルに近いように見えました。
サハ共和国へ来ると、一層日本人にもモンゴル人にも顔かたちが似てきます。実際には、ブリヤート人です。ブリヤートは、ブリヤートモンゴルとも言われ、その一部は今もモンゴルの北部森林地帯付近に住んでいます。
番組によると、ブリヤート人のDNAの95%くらいは日本人と同じらしく、その中のなんとかという遺伝子は、ブリヤート人と日本人には共通だけど、韓国人、中国人とは違うんだそうです。
そういう科学的根拠を知ると、一層ブリヤートモンゴル人との共通性を感じます。今のモンゴル国の多くは「ハルハ」という人たちで、「ブリヤート」はモンゴル国内では少数民族となっています。
が、ブリヤート人は「きれい好き」「勤勉」「木の家が好き」「集団を大事にする」など、妙に日本人の特徴と符合するから不思議です。
DNAという科学的事実とハルハ人から見たブリヤート人評という文化的側面から考えると、我々日本人のモンゴロイドとしてのルーツの一端はブリヤード人にあるような気がしてきます。実際、テレビに出てきたブリヤード人の顔立ちは本当に日本人に似ていました。
プーチンはシベリアでの日本からと投資資金や技術援助を期待しています。モンゴルもいろいろありましたが、今はロシアと上手くやっていきたいと思っています。日本も北方領土問題はあるものの、それ以外のネタは資源開発くらいしかありません。
ここは思い切って、日本、モンゴル、ロシアの3国で「シベリア極東モンゴロイド文化圏研究会」なるものを立ち上げて、そこでの共同研究などをやるのもいいんじゃないでしょうか?そういう研究は、結局アイヌ(樺太アイヌ、北海道アイヌ、国後アイヌなどの共通性)や北方領土の正当性にもつながることにもなると思います。
多分予算的には、リスクの大きいい資源開発や、法的整備にないままに行う莫大な北方領土へのインフラ投資に比べても、大した金額じゃあないでしょう。そうした非経済分野の交流も大切なんじゃないかと思います。
安倍さん、モンゴルをそういう切り口で考えてみてもいいんじゃないですか?