田崎正巳のモンゴル徒然日記

2021/09/29(水)11:32

ガソリンがない!?モンゴルで一体何が起こっているのか?(2)

モンゴルの生活(日常)(123)

どれが正しいのかはともかく、「モンゴルはロシアの匙(さじ)加減一つで、常に国が右往左往するリスクがある」というのは、1990年の民主化の時からわかっていたことでした。そうであったことは事実として仕方はないのですが、結局その後30年間もの間なんら対策を打ってこなかったことが問題の本質だと思います。 これは長年のエネルギー行政のつけだと思われます。モンゴルではエネルギー産業は厳しく規制されています。その分良い時もありましたが、反対もあります。ガソリン輸入業者の数と小売価格は政府によって規制されていたため、特にガソリンの輸入価格が大幅に上昇した時にはほとんど利益はなくなります。価格統制が厳しいために、場合によっては赤字になってしまうこともあり得るのです。 それ故に、ガソリン輸入業者は設備への大幅な投資が困難だということがあります。モンゴルでは将来性がある油田も発見されていますが、そのほとんどの採油・精製の権利は外国=中国に頼らざるを得ないのです。 なぜなら、国内企業にそれをやり遂げるだけの体力や資本の蓄積がないからです。30年間もあれば、市場を開放し、コク何に精製工場ができていてもおかしくなかったのですが、それぞれの時代の政権は、全くそれをしてきませんでした。 そして現在の最大の問題が、人々のFOMOでしょう。FOMOとは、Wikipediaによれば、「FOMO(Fear of missing out、フォーモ、取り残されることへの恐れ)とは、「自分が居ない間に他人が有益な体験をしているかもしれない」、と言う不安に襲われることを指す言葉である。」とあります。 ガソリンの潜在的な不足に関するニュースが広まったとき、人々はガソリンスタンドを待ち行列に入れ始め、燃料タンクを満たし、更なる在庫を持ち始めたとのことです。これは他人事ではなく、日本も石油ショックの時にガソリンスタンドに列をなし、トイレットペーパーを大量に買い込み、家庭内在庫としたことと同じです。 モンゴル西部の電力不足も原因はロシアのようです。モンゴル西部では電力はロシアから輸入していますが、ロシアでのメンテナンス作業のために数日間電力不足が生じているというのが、主な理由らしいです。ですが、本当の理由は違うらしいです。 モンゴル政府は先月、中国と「ホブド州にエルデネブレン水力発電所を建設する」ことに合意しました。これができれば、ロシア側からの供給は不要になります。つまり、ロシアにとっては外貨獲得手段が一つなくなるのです。恐らくこれに対してのロシア側の見せしめというのが有力な見方でしょう。いかにも姑息なロシアがやりそうなことです。 食品、建設資材などの輸入に関する問題は、ロシアではなく中国です。これらの主な輸入経路は中国からの鉄道やトラックで行われていますが、コロナの状況により、通関手続きが全体が非常に遅く官僚的になり、商品輸入全体が3-6か月遅れているそうです。 これにより単なる遅れ以外にも、輸送と保管のコストが大幅に増加しました。そうなると、二次的にはモンゴル国内市場での生産コストも上がります。特にアパートの建設コストは3割近くも上がっていると言われています。 こちらの問題に、ロシアと同じような「悪意」があるかどうかはわかりません。多分、ないような気がします。中国から見ればモンゴルへの商品輸出はごくごく少量でしょうし、今の習にそんなことにかまっている余裕はないと思います。ですが、もともと対モンゴルでは官僚的、意地悪的なので、潜在的な問題がコロナで顕在化したということではないでしょうか? 石炭の輸出に関する問題も同じようなことが原因でしょう。更に輸送手段がほとんどトラックであることもあり、ロシアからの燃料不足も河和って、全体の輸送プロセスが非常に遅くなり、中国側もモンゴル側の混沌とした状況を見て、トラックを制限しているとのことです。 結局わかるのは、ロシア、中国への極端な依存体制が民主化後も変わりなく続き、しかも何の改正、改良もしてこなかったということなのでしょう。今回のような問題がマイナス30度の厳冬に起こったら、本当に死活問題です、残念ですが、それがモンゴルの現実です。

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